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「“䜓内時蚈”を敎えお䜓調を良くするD-アミノ酞」No.294




正䜓䞍明だったアミノ酞に驚きの新発芋

“䜓内時蚈”を敎えお䜓調を良くするD-アミノ酞




研究成果のポむント


1.栄逊玠の䞀぀であるアミノ酞で、抂日リズム(=“䜓内時蚈”)を調敎できるこずを発芋


2.埮量すぎお謎の倚かったD-アミノ酞に泚目し、䜓内量を粟密に枬定するこずでその機胜

 を発芋


3.生掻習慣病や睡眠障害に関する医療ぞ応甚




抂芁


 倧阪倧孊医孊郚附属病院 酒井晋介 医員、倧孊院医孊系研究科 腎臓内科孊 猪阪善隆 教授、朚村 友則招ぞい准教授らは、D-アミノ酞の䞀皮であるD-アラニンが抂日リズムを調敎するこず、さらには、抂日リズムの調敎を通しお䜓内の恒垞性維持の䞀端を担っおいるこず、を発芋したした。


抂日リズムは䜓内の糖質の代謝や感染症ぞの免疫応答、さらには加霢など、さたざたな生䜓応答や生理珟象に関䞎しおおり、D-アラニンはこれらの抂日リズムに関連した応答を誘導したす。特に糖質の代謝においおは、D-アラニンは血䞭の糖質濃床を䞀定に保぀ように䜓内の糖質の産生量を制埡しおいたした。


 本研究では、生䜓内に埮量しか存圚しおいないこずから、その生理孊的意矩が長い間䞍明であったD-アミノ酞の新たな生理機胜の解明を通しお、生呜の謎の䞀぀を解明したした。

D-アラニンは日垞的に摂取する食物に含たれおいたすが、䜓内の量は疟患や䜓調により倉動するこずが知られおいたす。D-アラニンを利甚した抂日リズムの調節により、抂日リズム異垞に起因する疟患、䟋えば糖質代謝異垞症(糖尿病など)をはじめずした生掻習慣病や、睡眠障害などにおいお、新たな治療法の開発が期埅されたす。



図1. D-アラニンは抂日リズムを調敎し、関連する疟患の発症を抑制する。




研究の背景


 ヒトを含む倚くの生物は、抂日リズムずいう内圚する呚期で掻動しおいたす。その呚期は玄25時間ずされおいたすが、光や食事などの圱響によっお修正されおいたす。抂日リズムが異垞である堎合には睡眠障害はもずより、肥満や糖尿病、高血圧などの生掻習慣病に眹患しやすくなりたす。

䞀方で、血液䞭の糖質(血糖)は生物の掻動によっお消費されたすが、必芁な糖質量を維持するため、䜓内においお糖質を合成する機構があり、これを糖新生ずいいたす。腎臓ず肝臓は、糖新生を぀かさどる䞻芁な臓噚です。腎臓における糖新生は抂日リズムを有しおいるこずが知られおいたすが、それがどのような機構を通じお関連しおいるのか䞍明でした。


 本研究グルヌプは、これたで、独自に保有するキラルアミノ酞 (鏡像異性䜓のアミノ酞、図2)の高粟床な分析技術を甚いるこずで、さたざたな疟患における生䜓内D-アミノ酞の倉動を発芋し、腎臓病やりむルス感染症の怜査技術に぀いお報告しおきたした。これらの研究から埗た知芋ずしお、D-アラニンは糖質代謝に関連する臓噚に存圚し、さらに、血液䞭のD-アラニンが抂日リズムを瀺すこずから今回の研究を着想したした。


図2. キラルアミノ酞。


  アミノ酞には鏡像異性䜓ずしお、L䜓

  (巊図)ずD䜓(右図)が存圚するが、

  性質は異なる。

  生䜓にはL-アミノ酞しか存圚しないず

  長らく考えられおいた。




研究の内容


 本研究グルヌプは、たず、マりスの血液䞭においお、D-アラニンが既知の物質ず比范しお明確な抂日リズムを瀺すこず、たた、このリズムは腎臓からのD-アラニンの尿ぞの排泄により圢成されおいるこずを明らかにしたした。

そこで、マりスにD-アラニンを投䞎したずころ、腎臓においお糖質代謝(糖尿病など)、免疫(感染症など)、さらには長寿など、抂日リズムずの関連が瀺唆されるさたざたな生理珟象のシグナルが誘導されたした。糖質代謝に着目しお怜蚎したずころ、D-アラニンは腎臓においお糖新生を誘導するこずがわかりたした。腎臓のD-アラニンぞの感受性にも日内倉動があり、D-アラニンず抂日リズムによっお、生䜓内の血糖濃床が安定しおいるこずがわかりたした。

さらには、D-アラニンは生䜓の抂日リズムにも䜜甚するこずがわかりたした。これを瀺すために、光を完党になくした暗宀状態でマりスの行動倉化を解析したした。この状態では、マりスの抂日リズムが次第にずれおくるのですが、Dアラニンを補充するこずによっお、マりスの1日のリズムが改善したした。


本研究によりD-アラニンには抂日リズムを正垞化し、糖新生による血糖調敎に䜜甚があるこずが明らかになりたした。生呜の謎ずされおきた、D-アミノ酞にはこのような重芁な生理掻性があるこずから、今埌、D-アラニンを利甚しお、抂日リズムが関連する生掻習慣病や睡眠障害、さらには感染症などの治療ぞの応甚が期埅されたす。




本研究成果の意矩


 D-アラニンは抂日リズムず、抂日リズムが関連するさたざたな生理珟象を結び぀けるこずが明らかずなりたした。特に糖質代謝に関䞎しお、䜓内の血糖倀を䞀定に維持する䜜甚がありたした。D-アラニンは日垞摂取する食品に含たれおおり、わたしたちの抂日リズムの調節に重芁な圹割を果たしおいる可胜性がありたす。


近幎問題ずなったCOVID-19や、珟圚流行しおいるむンフル゚ンザりむルス感染症においお、䜓内のD-アラニンが䞍足するこず、そしおD-アラニンを補充するず症状が軜枛するこずもわかっおきおいたす。


適切なD-アラニンの䜿甚は、抂日リズムに関連する生掻習慣病や、感染症、さらには䞍眠においお治療効果を発揮する可胜性がありたす。




この研究に぀いお研究者からひずこず


 今たでは生物界に存圚しないず考えられおきたD-アミノ酞に、重芁な機胜があるこずが明らかになりたした。芋぀けられた機胜は、我々の掚枬の域をはるかに越えおおり、今たでの科孊的垞識を芆す発芋になりたした。

この研究成果をもずに、D-アミノ酞の健康増進効果が泚目されるきっかけになるこずを期埅しおいたす。


朚村友則 医孊系研究科 招ぞい准教授




甚語説明


抂日リズム

おおよそ24~25時間呚期で倉動する䜓内時蚈のリズムであり、ほずんどの生物に存圚しおいる。抂日リズムは内圚的に圢成されるが、光や枩床、食事など倖界からの刺激によっお修正され、抂日リズムが異垞になるず睡眠障害はもずより、肥満や糖尿病、高血圧などの生掻習慣病にかかりやすくなる。

 

D-アミノ酞

アミノ酞はタンパク質の構成芁玠であり、ほずんどのアミノ酞には鏡像異性䜓(キラル䜓)であるL-アミノ酞、D-アミノ酞が存圚する。しかし、生物界に存圚するアミノ酞は、ほずんどがL-アミノ酞である。最近の技術の進歩により、生䜓内にD-アミノ酞がごく埮量存圚し、さたざたな生理掻性を持぀こずがわかっおきた。

 

糖新生

生䜓内においお、アミノ酞や脂肪酞など、糖質以倖のものから糖(グルコヌス)を䜜り出す仕組み。䞻ずしお肝臓ず腎臓がその圹割を担っおいる。糖新生は、䜓内の血糖倀を維持する圹割がある。

 

鏡像異性䜓

3次元の物䜓などが、その鏡像ず重ね合わすこずが出来ない性質を持぀物質。䟋えば、L-アミノ酞は、鏡に映すずD-アミノ酞ずしお芋える(鏡像)が、別の物質であり重ね合わせるこずができない。L-アミノ酞、D-アミノ酞は、お互いがキラル䜓である。

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