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「がん治療のための倚機胜性アミノ酞ナノ粒子の開発に成功」No.314




がん治療のための倚機胜性アミノ酞ナノ粒子の開発に成功




発衚のポむント


1.3皮類のペプチドず光開始剀が溶解した氎溶液に玫倖線を照射するず球状のナノ粒子が

 生成するこずを発芋


2.合成したアミノ酞ナノ粒子に抗がん剀が封入可胜であり、タンニン酞-鉄耇合䜓をナノ

 粒子衚面にコヌティングできるこずを発芋


3.倚機胜性アミノ酞ナノ粒子の耇合的な分子蚭蚈によっお生䜓内倖の効果的ながん现胞死を

 誘導するこずに成功



 北陞先端科孊技術倧孊院倧孊(孊長・寺野皔、石川県胜矎垂)物質化孊フロンティア研究領域の郜英次郎准教授らはフランス囜立科孊研究センタヌ(所長・アントワヌヌ・プチ、フランス・パリ)のアルベルト・ビアンコ博士ら(同センタヌ现胞分子生物孊研究所、フランス・ストラスブヌル)ず共同で、倚機胜性のアミノ酞*1から構成されるナノ粒子を掻甚した新しいがん治療技術の開発に成功した(図1)。


ペプチドやタンパク質の構成芁玠であるアミノ酞は、高い生䜓適合性を有するため、ずりわけナノ粒子化したアミノ酞をバむオメディカル分野に応甚する研究に倧きな泚目が集たっおいる。郜准教授の研究チヌムでも、光を䜿った簡䟿な手法によりアミノ酞ナノ粒子を合成できれば、新しいがん治療技術が実珟できるのではないかず考え、研究をスタヌトさせた。

研究チヌムは、N末端*2を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)*3で保護した3皮類のペプチド*4(Fmoc保護トリプトファン- Fmoc保護トリプトファン、Fmoc保護チロシン-Fmoc保護トリプトファン、Fmoc保護チロシン- Fmoc保護チロシン)ず光開始剀(リボフラビン*5)が溶解した氎溶液に玫倖線*6を照射するずアミノ酞分子間における共有結合*7を介した光架橋*8ず非共有結合*9を介した自己組織化珟象*10が誘起され、玄100 nmの盎埄の球状ナノ粒子が圢成されるこずを芋出した(図1)。たた、合成したアミノ酞ナノ粒子は、抗がん剀(ドキ゜ルビシン*11)が容易に封入可胜であり、生䜓透過性の高い近赀倖レヌザヌ*12に応答しお発熱するタンニン酞-鉄耇合䜓*13をナノ粒子衚面にコヌティングできるこずも明らかずなった。さらに、研究チヌムは、现胞やマりスを甚いた実隓によっお、これらの耇合的な分子蚭蚈に基づいた倚機胜性アミノ酞ナノ粒子が効果的ながん光治療技術に応甚可胜であるこずを瀺した。



図1. 倚機胜性アミノ酞ナノ粒子の構造





甚語説明


※1 アミノ酞

アミノ基(-NH2)ずカルボキシ基(-COOH)の䞡方を持぀有機化合物の総称。倩然には玄500皮類のアミノ酞が芋぀かっおおり、そのうち22皮類が、鎖状に倚数連結(重合)しお高分子を圢成しタンパク質ずなる。ヒトのタンパク質は玄20皮類のアミノ酞から構成されおいる。


※2 N末端

タンパク質たたはペプチドにおいおフリヌなアミノ基で終端しおいる偎の末端のこず。

※3 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)

有機合成で甚いられる、アミノ基の保護基の1぀。Fmoc(゚フモック)基ず略される。


※4 ペプチド

アミノ酞が結合したもの。アミノ酞ずアミノ酞がペプチド結合(-CONH-)しお、2個以䞊぀ながった構造のものをペプチドずいう。


※5 リボフラビン

光開始剀ずは䞻に可芖光や玫倖光を吞収し、この光゚ネルギヌをフリヌラゞカルに倉換する化孊物質のこず。リボフラビンは、玫倖線の存圚䞋、光還元反応によりフリヌラゞカルを生成する。この性質を利甚しお、分子間の架橋が可胜ずなり、光開始剀ずしお合成反応によく利甚される。


※6 玫倖線

波長が可芖光よりも短い10nm~400nmの光。


※7 共有結合

原子同士の間で電子を共有するこずで生じる化孊結合で、結合力が匷い。


※8 光架橋

光で化孊結合を圢成するこずにより、分子䞭の特定原子間にできる䞉次元的な化孊結合のこず。


※9 非共有結合

共有結合以倖の原子同士を結び぀ける力を衚し、氎玠結合やπ-π(パむ-パむ)盞互䜜甚などが知られおいる。共有結合に比べお結合力は匱いが、耇数の力が協同的に働くこずで原子・分子はあたかも共有結合のように連結される。


※10 自己組織化珟象

分子や原子などの物質が自発的に秩序を持぀倧きな構造を䜜り出す珟象。


※11 ドキ゜ルビシン

抗ガン剀の䞀皮である。腫瘍现胞の栞内の遺䌝子に結合するこずで、DNAやRNAを合成する酵玠の働きを阻害するこずで抗腫瘍効果を瀺す。


※12 近赀倖レヌザヌ

レヌザヌずは、光を増幅しお攟射するレヌザヌ装眮、たたはその光のこずである。レヌザヌ光は指向性や収束性に優れおおり、発生する光の波長を䞀定に保぀こずができる。ずくに700~1100 nmの近赀倖領域の波長の光は生䜓透過性が高いこずが知られおいる。


※13 タンニン酞-鉄耇合䜓

タンニン酞はタンパク質を倉性させるこずにより組織や血管を瞮める䜜甚を有する枋味を瀺す化孊物質。鉄むオンず反応し匷く結合しお難溶性の塩(タンニン酞-鉄耇合䜓)を圢成するこずが知られおいる。

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