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「ポリフェノールの苦味刺激が肥満や糖尿病を予防する」-No.428




ポリフェノールの苦味刺激が肥満や糖尿病を予防することを発見




 芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田純)システム理工学部生命科学科・越阪部 奈緒美教授らの研究チームは、ポリフェノールの苦味刺激が耐糖能を改善し、肥満・糖尿病リスクを低減させる可能性があることを見出しました。


 ポリフェノールは植物性食品に豊富に含まれる生理活性物質で、長年にわたりその健康効果は関心を集めてきました。しかしながらポリフェノールは体内に吸収されないため、そのメカニズムは不明でした。今回の論文では、ポリフェノールが消化管全体に発現する苦味受容体に結合し、脳とコミュニケーションを取るホルモンの分泌を促し、血糖値や満腹感を調整することが示唆されました。今後、本研究の成果を用いた安全性が高い新たな肥満・糖尿病の予防・治療法の開発が期待されます。




ポイント


1.ポリフェノールは植物性食品に豊富に含まれており、長年にわたりその健康効果の関心を

 集めてきた。


2.ポリフェノールは、消化管にある苦味受容体に結合し、ホルモンの分泌を促進すること

 で、血糖値と満腹感を調整する。


3.今後、本研究の成果を用いた安全性が高い新たな肥満・糖尿病の予防・治療法の開発が期

 待される。



図. ポリフェノールを含む果物











研究の背景


 ポリフェノールは果物、野菜、ナッツ、コーヒー、お茶などの植物性食品に豊富に含まれている苦味や渋味を呈する生物活性化合物で、その健康効果は、我が国においてトクホや機能性表示食品を通じて普及しています。


摂取したポリフェノールは、吸収性が低いためほとんど糞便中に排出されます。一方近年、ヒトを含む哺乳類において、苦味受容体は口腔内だけでなく消化管にも発現することが発見されました。消化管の苦味受容体の活性化は、耐糖能や食欲を調整する消化管ホルモンの分泌を調整する可能性が示唆されています。

しかしながら、ポリフェノールは 8,000 種類以上が確認されており、加えてヒトでは 25 種類の苦味受容体が存在するため、それらの相互作用と健康効果に至るメカニズムは不明であり、このギャップを埋める知見が求められていました。




研究の概要


 研究チームは、ポリフェノールと苦味受容体の相互作用による健康効果を理解することを目的に検証を行いました。その結果、100 種を超えるポリフェノールが、10 数種類の苦味受容体と相互作用する可能性が示されました。また、これらのポリフェノールを含む食品や画分を動物やヒトが摂取した場合においても、コレシストキニン(CCK)やインクレチンなどの胃腸ホルモンの分泌を促進することがわかりました。インクレチンにはグルコース依存性インスリン分泌ポリペプチドやグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)が含まれ、これらがインスリン分泌を引き起こし、血糖値を調整することが知られています。また、動物実験やヒト介入試験においても、耐糖能の改善や食欲の抑制が認められることがわかりました。


本論文の成果は、ポリフェノールの苦味刺激が、血糖値と食欲の調整を通じて肥満と糖尿病のリスクを減少させる可能性を示しており、健康を維持するための新たな知見を提供しています。




今後の展望


 現在、糖尿病の治療には GLP-1 関連の薬剤が用いられていますが、消化管などに副作用が見られるため、予防を目的に広く用いることは困難です。


 本研究ではこれまで不明であった耐糖能改善や食欲抑制といったポリフェノールの健康効果が、その苦味に由来することを見出した初めての論文です。

今後、本研究の成果を用いて安全性で実用性の高い新たな肥満・糖尿病の予防法の開発が期待されます。



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