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「外側円板状半月板の形態的特徴を明らかに」-No.283





痛みなどの症状はどこから? 外側円板状半月板の形態的特徴を明らかに




研究ポイント


1.外側円板状半月板の有症状例と無症状例の形態的特徴を比較。


2.有症状例では脛骨幅に対する半月板占有率※1 が高く、半月板最厚部高も有意に大きいこ

 とが明らかに。


3.手術適応の診断や、手術計画を立てることで診療の一助になることに期待。




概要


 外側円板状半月板とは、本来半月状になっている膝外側の半月板が、丸く分厚い形状になっている先天的な形状異常(図 1)のことで、その多くは小児期から症状が現れるとされています。日本では、外側円板状半月板の発生頻度は数パーセントから十数パーセントとされており、痛みなどの症状がでなければ治療する必要はありません。

一方で、外側円板状半月板は組織学的にも損傷しやすいとされており、膝痛、引っかかり感などの症状をきたす場合があります。


 大阪公立大学大学院医学研究科 整形外科学の西野 壱哉病院講師、橋本 祐介特任教授らの研究グループは、外側円板状半月板において、症状がある症例(61膝)と無症状例(35膝)を比較し、形態的特徴を調べました。

本研究では、脛骨幅に対する冠状(真正面から見た断層像)半月板占有率、矢状(真横から見た断層像)半月板占有率の計算と、半月板最薄部と最厚部の高さを計測しました。

その結果、症状がある症例群では冠状半月板占有率、矢状半月板占有率、逸脱※2、半月板最厚部高(半月板の厚みが最も分厚いところの高さ)が無症状群と比べて大きいことが明らかになりました。さらに、有症状円板状半月板は無症状半月板と比べ、半月板形態が水平方向に大きく、特に内部変性の傾向が強いことも分かりました。


図 1:外側円板状半月板の形状イメージ







西野 壱哉病院講師

 本研究によって、症状をきたす外側円板状半月板がどのように損傷して形状変化を起こしているのかが明らかになりました。我々が報告した画像上の特徴が、本疾患の診断、治療計画の一助となることを切に願います!




研究の背景


 外側円板状半月板は先天的な半月板の形態異常で、組織学的にも損傷しやすいとされています。中には膝痛、引っかかり感などの症状をきたし手術に至る症例がありますが、症状をきたす症例と無症状の外側円板状半月板の形態的な特徴の違いは明らかとなっていませんでした。

 

研究の内容


 本研究では、転位のない※3外側円板状半月板手術症例 61 膝(有症状群)と、症状はないが MRI上外側円板状半月板が検出された 35 膝(無症状群)を対象とし、冠状断、矢状断でそれぞれ脛骨幅に対する半月板の占有率を計算しました。また半月板最薄部と最厚部の高さも計測しました。

その結果、有症状群では無症状群と比べて冠状半月板占有率、矢状半月板占有率が高いことが明らかになりました(図 2)。さらに、逸脱、半月板最厚部高も無症状群と比べて大きいことも明らかになりました。


図 2:MRI による有症状群・無症状群の比較




期待される効果・今後の展開


 本研究より、症状を有する外側円板状半月板は、無症状のものと比べて関節内に占める半月板の幅の割合が大きくなっているという特徴があることが分かりました。

これらの特徴を踏まえた上で手術の決断や手術計画を立てることは、診療の一助になることが期待されます。今後は手術前後での半月板の形態的な変化を三次元的に調査していきます。

 



用語解説


※1 占有率:

脛骨の幅における半月板の幅の占める割合を計算している。


※2 逸脱:

半月板が脛骨の辺縁よりも外方に突出すること。逸脱をきたすと、半月板の持つ軟骨保護作用が失われ、変形性関節症のリスクとなる。


※3 転位のない:

円板状半月板は辺縁部で損傷を受けると、しばしば大きく前後にずれてしまう。この状態を「転位している」という。転位した半月板は MRI で容易に診断できるが、円板状半月板の中には転位していなくても症状を有し手術に至るような症例が存在する。

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