心拍による頭の揺れを無意識に眼球運動が補正することを発見
覚醒度との関連性も実証
ー眠気検知・居眠り防止の新たな技術として期待ー
研究成果のポイント
1.心拍による頭部の揺れを眼球運動で補償していることを発見(この眼球運動がないと本が
読めないという患者の知見と一致)
2.静かな室内での眠気も、心拍に連動するこの眼球運動で検知できることを発見
3.仕事や勉強中の眠気をいち早く検知し、適切な休息を促すことが可能に
4.視線移動や振動を検知するメガネやスマホのカメラを利用して実用化を目指す
発表概要
自動車運転中の眠気は交通事故を引き起こす大きな原因の一つになる。居眠り運転だけでなく、静かな室内での仕事や勉強中でも、眠気の情報をいち早く検知して適切な休憩を促すことが重要である。これまでにも眠気を検知するいくつかの方法が提唱されている。中でも頭部の揺れを補償し視野のブレをなくす反射性の眼球運動である前庭動眼反射(注1)を検知する手法は、本人が眠気を感じる前に、その兆候を捉えられる点で優れている。一方で、これまで確認された前庭動眼反射による眠気検知は、自動車運転中などに頭部が外から揺らされるときに限定されており、室内での仕事や勉強など頭部の揺れがない環境では前庭動眼反射が誘発されないため、眠気の検知に活用できない点が懸念されていた。
中部大学大学院工学研究科ロボット理工学専攻の山中都史美大学院生と同大学理工学部AIロボティクス学科の平田豊教授らは、ヒトは外から揺らされない時も、心拍による微小な頭部の揺れを前庭動眼反射で補償し、安定した視野を保っていることを発見した。さらに心拍により誘発される前庭動眼反射からも眠気を検知できることを示した。また、これまで研究室では頭部が縦に揺れる際に誘発される垂直方向の前庭動眼反射を検知してきたが、瞬きやまつげなどの影響で眼球が隠れやすい垂直方向に比べ、より長い時間、眼球の動きを検知できる水平方向の方が前庭動眼反射で眠気を検知しやすいことを初めて示した。
今回の実験は被験者となった学生14人が、頭部に心拍や呼吸による動きを検出する角速度計を装着し、眼球の動きをカメラで撮影して実施した。視線の移動や頭部の振動を検知できるメガネは実用化されており、それを用いれば、ふだんの生活で眠気を知らせてくれる技術が実現するとみている。また、スマートフォンの動画撮影・処理機能を使っても同様の技術を実現できる。自動運転中の車内にとどまらず、職場での作業や教室での勉強など、様々な場面に応用できると期待している。
用語説明
注1 前庭動眼反射
頭部運動時にそれとは逆向きにほぼ同じスピードで眼球を回転させる反射性の眼球運動。これにより、動物が動く際に頭部動揺が生じても見ているものがブレないで安定した視野が得られる。ビデオカメラの手ぶれ防止に似た”頭ぶれ防止”機能。
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