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未在代表 松舘 敏

「脳の神経核(大脳基底核)」 ~先人に学ぶ シリーズ 3~


 オステオパシー(医学)の「病因」の基礎的考え方に「構造(解剖)は機能(生理)を支配する」といった哲学がある。

 

 オステオパシー治療は、この構造の病変(オステオパシー病変)を施術で健全化することにより、機能(生理)を正常化し、病の治癒や症状の寛解を促していく。


その為、人体構造(解剖学)そして身体機能(生理学)の詳細な知識が求められる。そして更に、その構造体を触診できる技術とともに、構造体の「正常な位置」「正常な硬さ」「正常な動き」を診る治療者の「感性」が求められる。


そして感性に加え、「病」が発症するにあたっての「構造体の偏移・変化のプロセス」の知識を背景に置き、身体の構造を診ていくことが必要となる。



以下に、先人の先生方から学び得た「知識」を記録に残します。

 


脳の神経核(大脳基底核)について



 私が視床のテクニックを開発してから約15年になります(このテクニックを使ったチック症の治療ビデオは、セミナーでこれまでに約4千名の方に見せてきました)。そして、その後これまでの間に、その他多くの神経核に対する診断とアプローチの方法を開発してきました。


2019年、世界的に有名なフランスのジャン・ピエール・バラルD.O.がJOPAセミナーで来日された時に、モデルを使って神経核や心臓弁などのデモンストレーションを目前で行い、モデルの不整脈を完全に消失させたことで、大変絶賛して頂きました。



 今回は、「神経核」の中でも重要な「大脳基底核」について触れてみたいと思います。


 大脳基底核は、視床の外にある灰白質の塊りで、①尾状核、②レンズ核、③前障という3つの核より構成されています。


 「扁桃体」は以前であれば尾状核尾に接していることから、大脳基底核に入れられていましたが、最近では、辺縁系の一部と見なされています

これらの核は、一つの塊りとして動いているのではなく、それぞれに固有の動きがあることを熟練したオステオパスであれば感じ取れると思います。大脳基底核の個々の核群の働きは、今のところまだ詳しくは解明されていませんが、全体としては、錐体外路の一中継点としての特性があり、姿勢の保持や運動の調整などに関与しています。


 そして、これは私の経験からですが、線条体の中でも「尾状核」(特に右側)は、特に「輪状甲状関節」と「仙腸関節」のバランスに関与し、「被殻」は中心軸(例えば心臓、血管など)のバランスや動きに関与していると感じています。

また、「淡蒼球」は内臓の動きとアレルギーに強く関与している一つであると思っています。


 そして、「前障」が最も強く関与しているのが「骨」です。これについては、これまでにもセミナーなどで多くの受講生に見せていますが、ここを刺激すると、曲がった骨でも真っ直ぐになってくるのには驚かされます


 また、医学的に解説するのであれば、「線条体」の異常があると不随意運動が起こりやすくなります。また、「内包」には投射線維が密集しており、ここに接する大脳基底核で出血などが起こり、下行性神経線維が障害されると反対側に運動麻痺を起こし、上行性線維が障害されると、反対側の知覚障害を起こします。


 こういった疾患に対し、我々オステオパスがどのように考え、どのように治療するかはこの場合でも「原理原則」に則って治療します。つまり、問題となっている所(神経核)をいきなりマニピュレーションをしようとするのではなく、何故、このようになったのか(なぜ出血するような負荷がかかるようになったのか)、全体像を見て考えるのです。


簡単に要約すると、


まず、大きな問題となっている外側部分から介入し(仙腸関節、輪状甲状関節、大腿部の骨端線が多い)、大まかに身体の構造を治します。

次に、頭蓋の孔をリリースすることで、頭蓋腔の全体を拡げ、脳神経や細胞が動く事の出来る余地を作ります。そして排液をし、組織を柔らかくした後に、大脳基底核(最初に治療するのは尾状核が多いように感じています)に移行します

そして、その次に前障を多くの場合治療するのですが、なぜかという説明は、文字でするのは非常に困難ですので、ここでは割愛します。

こういった処置を施した後に、ゆっくりと核心部分に入っていきます。


状況により、百パーセントうまくできることばかりではありませんが、多くの場合、驚くような結果が出ると思います。但し、簡単ではありませんが…。



JOPA会報誌 「JOPATOMIA 会長コラム」を抜粋掲載させていただきました。




2023年06月4日(日)

未在代表 松舘 敏

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