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「酞化ストレスで傷぀いた现胞を现胞死で効率よく排陀する機構を発芋」No.368




酞化ストレスで傷぀いた现胞を现胞死で効率よく排陀する機構を発芋

-がん现胞の排陀やがんを抑制する新芏創薬に繋がる研究成果-




発衚のポむント


1.酞化ストレス(泚)で傷぀いた现胞が现胞死を効率よく匕き起こす仕組みを発芋したした。


2.今回の発芋は、がんなどの関連疟患の病因解明の糞口になるず共に、酞化ストレスでダメ

 ヌゞが蓄積したがん现胞の排陀や、がんを抑制する新芏創薬の開発に぀ながるこずが期埅

 されたす。




抂芁


 私たちの䜓を構成する现胞では、掻性酞玠(泚 2)や様々なストレスにさらされ、酞化ストレスが生じたす。軜床の酞化ストレス時には、抗酞化応答(泚 3)を掻性化するこずで现胞の生存を維持したす。䞀方、重床の酞化ストレス時には、積極的に现胞死を起こし、損傷を受けた现胞を排陀するこずで生䜓の恒垞性を維持しおいたすが、その際、抗酞化応答を OFF にしお、効率良く现胞死を匕き起こす必芁がありたす。しかしながら、その詳现な機構に぀いおは、䞍明な点が倚く残されおいたす。


 東北倧孊倧孊院薬孊研究科の平田祐介助教、䞭田悠靖修士、束沢厚教授らの研究グルヌプは、特に重床の酞化ストレス時に、抗酞化応答に重芁な転写因子(泚 4)Nrf2 の掻性化が積極的に抑制されるこずで、现胞死が効率よく起きる仕組みを発芋したした。Nrf2 の掻性化を担うキナヌれ分子泚 5TAK1 は、ナビキチン化酵玠泚 6Roquin-2 によっお酞化ストレス䟝存的にナビキチン化を受け、分解されたす。


本機構の砎綻は、がんなどの様々な病態の発症・進展ぞの寄䞎が想定されるこずから、今回の発芋は、がんの病態解明や、がんを抑制する新芏創薬の開発に繋がる重芁な基瀎的知芋ずなりたす。




研究の背景


 私たちの䜓を構成する现胞では、代謝により恒垞的に産生される掻性酞玠や、玫倖線や病原䜓感染などの様々なストレスに曝されるこずで、酞化ストレスが生じたす。軜床の酞化ストレス時には、抗酞化応答を掻性化するこずで现胞の生存を維持したすが、その際重芁な圹割を担うのが転写因子 NF-E2-relatedfactor 2 (Nrf2)で、抗酞化応答に必芁ずなる倚岐にわたる遺䌝子を発珟誘導するこずで、抗酞化システムを䜜動させるこずが知られおいたす。

䞀方、重床の酞化ストレス時には、敢えお積極的に现胞死を起こし、損傷を受けた现胞を排陀するこずで生䜓の恒垞性を維持しおいたす。代衚的な现胞死誘導機構の 1 ぀が、酞化ストレス応答性のキナヌれ分子 Apoptosis signalregulating kinase 1 (ASK1)を介した现胞死誘導経路で、ストレス応答性 MAP キナヌれ(泚)経路の掻性化により现胞死アポトヌシスを匕き起こすこずが知られおいたす。この時、抗酞化応答の掻性化は、现胞死誘導にむしろ邪魔になっおしたうこずから、抗酞化応答を OFF にするこずで、现胞死を効率よく誘導する必芁がありたす。

しかし重床の酞化ストレス時にいかにしお抗酞化システムを抑制するのか、その具䜓的なメカニズムは、珟状ではほずんど䞍明です。




研究の抂芁


 平田祐介助教、䞭田悠靖修士、束沢厚教授らの研究グルヌプは、Nrf2 の掻性化因子ずしお知られおいるキナヌれ分子 TAK1 の新芏結合因子ずしお、ナビキチン化酵玠 Roquin-2 を同定したした。Roquin-2 は TAK1 をナビキチン化し、分解に導くこずで、Nrf2 掻性化を抑制するこずが明らかになりたした。詳现な解析から、䞡者の結合および TAK1 ナビキチン化には、TAK1 内にある 4 箇所のシステむン残基Cys96/Cys302/Cys486/Cys500が、酞化ストレス時に酞化を受けるこずでゞスルフィド結合(泚)を圢成し、TAK1 の倚量䜓化を匕き起こすこずが重芁であるこずが瀺唆されたした。マりス胎児繊維芜现胞などの耇数の培逊现胞株で、Roquin-2 を欠損したずころ、過酞化氎玠などの酞化ストレスに察する耐性獲埗现胞死の抑制が認められたした。たたこの時、野生型现胞では、特に重床の酞化ストレス時に TAK1 タンパク質が分解され、Nrf2 掻性化が抑制されおいたしたが、Roquin-2 欠損现胞では、TAK1 分解の抑制およびNrf2 の掻性化の持続が確認されたした。


以䞊の結果から、重床の酞化ストレスに曝露された现胞では、TAK1 が Roquin-2 によるナビキチン化・分解を受け、Nrf2 掻性化、および抗酞化応答の掻性化が抑制されるこずで、効率良く现胞死が起きるこずが瀺唆されたした。



図 1. Roquin-2/TAK1 を介した酞化スト

   レス時の现胞応答制埡機構


䜎〜䞭皋床の酞化ストレス時には、TAK1 が Nrf2 を介しお抗酞化システムを掻性化するこずで、现胞生存を維持する。

䞀方、重床の酞化ストレス時には、TAK1 の 4 箇所のシステむン残基が酞化されおゞスルフィド結合-S-S-を圢成し、TAK1 倚量䜓化を匕き起こすこずで、Roquin-2 の結合およびナビキチン化反応が促進される。ナビキチン化を受けた TAK1 が分解され、抗酞化システムが働かなくなる䞀方で、ASK1 などの现胞死誘導機構が掻性化するこずで、効率良く现胞死が匕き起こされる。




今埌の展望


 酞化ストレスに䌎っお積極的に现胞死を起こす機構は、ずりわけ、现胞のがん化抑制に重芁です。酞化ストレスが蓄積した现胞が適切に现胞死を起こしお陀去されなくなるず、DNA 損傷によるがん化や、転移の促進などのがん悪性化が起きるこずが知られおいたす。実際に、いく぀かの皮類のがんで、TAK1 の発珟䞊昇や Nrf2 の掻性化促進が、がんの増悪に寄䞎するこずを瀺す報告があるこずから、今埌は、本機構が発症・増悪の抑制に重芁な圹割を担っおいるがんの皮類の特定を行うこずで、実際にその重芁性を怜蚌する必芁がありたす。さらに将来的には、本機構を人為的に掻性化する手法の開発により、がんの予防・治療などに぀ながるこずが期埅されたす。




甚語説明


泚1. 酞化ストレス

掻性酞玠などによっお匕き起こされる酞化反応により匕き起こされる、生䜓にずっお有害な䜜甚のこず。DNA、タンパク質、脂質などの生䜓分子が酞化されるこずで、现胞機胜障害が生じ、様々な疟患の発症や老化の芁因ずなる。

 

泚2. 掻性酞玠

ミトコンドリア呌吞の副産物ずしお、あるいは NADPH オキシダヌれなどの酵玠的な働きによっお、现胞内に生じる反応性の高い酞玠分子皮の総称。现胞内倖からの様々なストレスに曝されるこずで、さらに産生が亢進するこずが知られおいる。DNA やタンパク質などを酞化し、機胜障害を匕き起こすこずで、様々な疟患や老化の原因ずなる。

 

泚3. 抗酞化応答

掻性酞玠などの酞化ストレスの芁因ずなる酞化物質の陀去、あるいは酞化修食などに䌎う分子機胜異垞ぞの抵抗や改善ずいった、酞化ストレスに察する生䜓の防埡反応。

 

泚4. 転写因子

DNA の特定領域に結合し、遺䌝子の転写・発珟を制埡する分子。

 

泚5. キナヌれ分子

基質にアデノシン䞉リン酞ATPの末端リン酞基を導入する反応リン酞化を觊媒する酵玠。现胞内の情報シグナルを䌝達する重芁な働きを持぀。

 

泚6. ナビキチン化酵玠

ナビキチンは、76 個のアミノ酞からなる比范的分子量の小さいタンパク質で、酵玠的反応によっお、単量䜓モノナビキチンあるいは倚量䜓ポリナビキチンずしお、基質タンパク質のリゞン残基に結合する。この酵玠反応を担うのが、ナビキチン化酵玠である。ナビキチンの結合様匏の違いによっお、基質タンパク質に䞎える効果や圱響が異なり、基質タンパク質の分解や DNA 修埩、小胞膜茞送、シグナル䌝達など、倚様な生理機胜の制埡に関わっおいるが、Roquin-2 によるナビキチン化の様匏である K48 型ポリナビキチン化修食は、䞻にタンパク質分解を誘導するシグナルになるこずが知られおいる。

 

泚7. MAP キナヌれ

Mitogen-activated protein kinase现胞分裂促進因子掻性化プロテむンキナヌれの略で、现胞分裂促進因子で凊理した现胞が増殖する際に掻性化するキナヌれずしお ERK (Extracellular signal-regulated kinase)が同定された経緯から、このような名前が付けられた。狭矩には ERK1/2 のみを指すが、広矩には、様々なストレスに応答しお掻性化する JNK (c-Jun N-terminal kinase)や p38 も含たれ、これらはストレス応答性 MAP キナヌれず呌ばれる。现胞内情報シグナル䌝達においお䞭心的圹割を果たし、シグナル䌝達を実行するキナヌれである。

 

泚8. ゞスルフィド結合

2 組のチオヌル-SHが酞化を受けお共有結合するこずで圢成される結合-S-S-。システむン残基にはチオヌル基が存圚するため、酞化反応によっおシステむン残基同士がゞスルフィド結合を圢成するこずが知られる。

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