間質性肺炎の新たな治療標的を発見〜CD109分子
研究成果のポイント
1.CD109 分子が、肺線維化の最も重要な経路である TGF-β伝達経路を阻害することによ
り、肺線維化を抑制することを世界に先駆けて明らかにしました。
2.CD109 タンパクを投与したマウスや、CD109 分子を過剰発現させたマウスでは、肺の
線維化が著明に軽減することを見出しました。
3.特発性肺線維症(IPF)を始めとした間質性肺炎は、肺の線維化により呼吸不全を来たす難
治な病気です。そのため、画期的な治療薬の開発が望まれています。
本研究成果により、CD109 分子を標的とした間質性肺炎の新たな治療薬の開発が期待さ
れます。
概要
浜松医科大学内科学第二講座の直井兵伍医員(大学院生)、鈴木勇三助教、須田隆文教授らの研究チームは、CD109 分子が肺線維化の最も重要な経路である TGF-β伝達経路を阻害することにより肺の線維化を抑制することを明らかにしました。
研究の背景
特発性肺線維症(IPF)を始めとした間質性肺炎は、肺胞の壁に炎症や損傷が起こり、壁が厚く硬くなるため(線維化)、酸素を取り込みにくくなる原因不明の疾患です。
現在までに間質性肺炎で使用可能な薬剤は、ピレスパとオフェブの2薬剤のみでした。また、その効果は疾患進行の抑制に留まります。そのため IPF を始めとした間質性肺炎の新規治療薬の開発は、アンメットメディカルニーズ(いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)です。
研究手法・成果
代表的な肺線維化モデルである、ブレオマイシン肺臓炎モデルを用いて肺線維症の病態を再現しました。非常に興味深いことに、CD109 を高発現させたマウスでは、肺の線維化が著明に軽減することを見出しました。
研究グループは、CD109 分子が肺線維化病態の中心をなす TGF-β伝達経路を阻害することにより、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を抑制して、肺の線維化を抑えること明らかにしました。非常に重要なことに、CD109 タンパクを投与することにより、マウス肺の線維化を軽減できることを明らかにしました。
今後の展開
本研究の結果から、CD109 分子が線維化の主病態に深く関わり、肺の線維化を制御していることが示されました。今後 CD109 分子を標的とした薬剤が、間質性肺炎の新しい治療薬につながることが期待されます。
<参考図>