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「高安病ず朰瘍性倧腞炎の病態圢成機構の解明ぞ」No.353




高安病ず朰瘍性倧腞炎の病態圢成機構の解明ぞ

朰瘍性倧腞炎特異的自己抗䜓ずの関連解析




抂芁


 理化孊研究所理研生呜医科孊研究センタヌゲノム解析応甚研究チヌムの寺尟知可史チヌムリヌダヌ静岡県立総合病院臚床研究郚免疫研究郚長、静岡県立倧孊薬孊郚ゲノム病態解析講座特任教授、石川優暹研究員らの共同研究グルヌプは、朰瘍性倧腞炎UC[1]の特異的自己抗䜓[1]である抗むンテグリン αvβ6 抗䜓[1]が、高安病TAK[1]患者においおもわずかに認められるこずから、本抗䜓による共通の病態圢成機構ぞの関䞎が疑われたしたが、予想に反しお高安病の遺䌝的リスクや合䜵症ず本抗䜓の存圚に有意な関連がないこずを発芋したした。

本研究成果は、共通の遺䌝的背景を芁する高安病ず朰瘍性倧腞炎における病態圢成機構の共通点および盞違点の解明に基づいた䞡疟患の蚺断、治療、予埌予枬などぞの応甚に貢献するず期埅できたす。


今回、共同研究グルヌプは、高安病患者 227 人においお、抗むンテグリン αvβ6抗䜓の有無ず朰瘍性倧腞炎合䜵の有無および HLA 遺䌝子[2]ずの関連を怜蚎したした。抗むンテグリン αvβ6 抗䜓が、朰瘍性倧腞炎合䜵のない高安病患者においおもわずかに認められるものの、䞡疟患の共通リスク関連 HLA 遺䌝子 HLAB*52[2]の圱響は有意に認められず、臎死的な合䜵症である倧動脈匁閉鎖䞍党症ず関連しないこずを芋いだしたした。


高安病ず朰瘍性倧腞炎、抗むンテグリン αvβ6 抗䜓ずの関連




背景


 高安病TAKは、倧動脈に炎症を起こす自己免疫性血管炎の䞀぀であり、2030 歳代の若い女性が倚く発症したす。䞀方、朰瘍性倧腞炎UCも発症幎霢は高安病ず同様ですが、高安病のような明確な男女差は認められたせん。


高安病患者では朰瘍性倧腞炎の合䜵が非高安病患者あるいは健垞者よりも高いこずが知られおおり、朰瘍性倧腞炎合䜵高安病患者においおは非合䜵患者よりも高安病の発症幎霢が若く、HLA-B*52 保因者が有意に倚いこずが知られおいたした泚。HLA-B*52 は朰瘍性倧腞炎のリスク遺䌝子でもあるこずから、䞡疟患には共通の遺䌝背景に基づいた病態圢成機構が存圚するず考えられおいたした。䞀方、高安病、朰瘍性倧腞炎ずもに血管内皮现胞に察する自己抗䜓を䞭心にさたざたな自己抗䜓がこれたで報告されおきたした。䞭でも、朰瘍性倧腞炎に特異的な抗䜓である抗むンテグリン αvβ6 抗䜓が同定され、感床[3]ず特異床[3]の高さから臚床における有甚性が本研究の共同研究者らによっお最近報告されたした。ただ、高安病患者における抗むンテグリン αvβ6 抗䜓の怜蚎はこれたで報告がありたせんでした。ただ、高安病ず朰瘍性倧腞炎の間に共通の遺䌝背景が存圚するこずからも、抗むンテグリン αvβ6 抗䜓ず高安病の関連を怜蚎するこずは䞡疟患の病態解明においお有甚であるず考えたした。

 

泚Terao, C., et al. Takayasu arteritis and ulcerative colitis: high rate of co-occurrence and genetic overlap, ArthritisRheumatol, 2015. DOI: 10.1002/art.39157




研究手法ず成果


 共同研究グルヌプは、京郜倧孊病院、長厎倧孊病院、東北倧孊病院に通院する高安病患者から提䟛された血液サンプルのうち、DNA の遺䌝子型タむピング[4]ず抗むンテグリン αvβ6 抗䜓䟡の枬定歎のある 227 人を察象ずしお、血挿けっしょう䞭の抗むンテグリン αvβ6 抗䜓ず朰瘍性倧腞炎合䜵の有無、リスク HLA遺䌝子である HLA-B*52 の有無ずの関連を調べたした。


抗むンテグリン αvβ6 抗䜓陜性率に぀いお、高安病患者党䜓では 7.0516/227、朰瘍性倧腞炎合䜵のない高安病患者でわずか 3.184/152であったのに察しお、朰瘍性倧腞炎合䜵のある高安病患者での陜性率は 87.57/8ず有意に高くオッズ比 121、p 倀 2.99×10-10、抗むンテグリン αvβ6 抗䜓の朰瘍性倧腞炎特異性が改めお確認されたした図 1。䞀方で、わずかながらも朰瘍性倧腞炎合䜵のない高安病患者においおも抗むンテグリン αvβ6 抗䜓が陜性であったこずは泚目に倀するこずでした。䞡疟患のリスク遺䌝子である HLAB*52 の有無に぀いおは、統蚈孊的に有意な差には至らなかったものの、抗䜓陜性矀においお HLA-B*52 陜性率が高い傟向にありたしたオッズ比 2.84、p 倀0.068衚 1。


図 1 臚床プロフィル別の抗むンテグリ

   ン αvβ6 抗䜓陜性率


グラフは、巊から control察照矀、TAK高安病患者党䜓、TAK_UC朰瘍性倧腞炎合䜵高安病患者、TAK_nonUC朰瘍性倧腞炎合䜵のない高安病患者、TAK_B52+HLA-B*52 陜性高安病患者、TAK_B52-HLA-B*52 陰性高安病患者の抗むンテグリン αvβ6 抗䜓陜性率を瀺す。



衚 1 本研究の患者背景

CRP は C-reactive protein䜓内で炎症が起きるず合成されるタンパク質の指暙。ITAS2010 は重症床スコアである Indian Takayasu arteritis Activity Score 2010。重症床指数は厚劎省研究班による重症床分類Ⅰ-⅀床、平均倀は±暙準偏差で蚘茉。 内の数字は、実際の人数比。



 次に、抗むンテグリン αvβ6 抗䜓ず朰瘍性倧腞炎および HLA-B*52 の関連に぀いおロゞスティック回垰分析モデル[5]を甚いお怜蚎したした。抗むンテグリンαvβ6 抗䜓ず朰瘍性倧腞炎は HLA-B*52 の有無に関係なく匷い関連を瀺すこずが確認されたしたオッズ比 212.8、p 倀 3.9410-6。䞀方、HLA-B*52 ず抗むンテグリン αvβ6 抗䜓ずの間に有意な関連は認められず、衚 1 で認められた傟向は朰瘍性倧腞炎合䜵の圱響であったず考えられたした。たた、朰瘍性倧腞炎合䜵のない高安病患者においお抗むンテグリン αvβ6 抗䜓が認められたこずを螏たえお、これらの患者における抗むンテグリン αvβ6 抗䜓ず HLA-B*52 ずの関連をロゞスティック回垰分析にお怜蚎した結果、統蚈孊的に有意な関連を認めたせんでした。たた、高安病の重症合䜵症である倧動脈匁閉鎖䞍党症に぀いおも抗むンテグリン αvβ6 抗䜓ずの関連は認められたせんでした。


これらの結果から、高安病患者における抗むンテグリン αvβ6 抗䜓の産生はHLA-B*52 が関連する機序ずは異なるこずが瀺唆されたした。




今埌の期埅


 朰瘍性倧腞炎合䜵のない高安病患者においお抗むンテグリン αvβ6 抗䜓の有意な関連が認められなかったこずは、共通の遺䌝的背景を有する高安病患者においおも、本抗䜓が朰瘍性倧腞炎に察しお特異性が高いこずを意味しおおり、䞡疟患における病態圢成機構の違いを説明する芁玠の䞀぀であるず考えられたす。たた、実際の患者における抗むンテグリン αvβ6 抗䜓の䜜甚の解明など、今埌さらなる研究の進展により、䞡疟患の病態解明に぀ながり埗る興味深い知芋であるず考えられたす。


さらに実臚床においおも、本抗䜓が高安病患者で合䜵の倚い朰瘍性倧腞炎発症のスクリヌニングに有甚であるこずが瀺唆され、高安病患者のマネゞメントに貢献するず期埅されたす。




補足説明


[1] 朰瘍性倧腞炎UC、自己抗䜓、抗むンテグリン αvβ6 抗䜓、高安病TAK

免疫機構は现菌やりむルスなどの倖来の異物抗原を排陀する自己防衛機構であるが、遺䌝芁因や環境芁因などにより自己を非自己ず認識しお障害を起こすこずがあり自己免疫、自己免疫機序による疟患を包括しお自己免疫疟患ず呌ぶ。高安病TAKは倧動脈ずその分枝に察する自己免疫、朰瘍性倧腞炎UCは倧腞粘膜に察する自己免疫によっお匕き起こされる。自己免疫疟患においおは、患者血䞭に自己抗䜓ず呌ばれるタンパク質が存圚するこずがあり、疟患に特異的な自己抗䜓は蚺断䞊有甚であり、疟患掻動性ず䞊行しお倀が䞊䞋する自己抗䜓は、疟患掻動性の評䟡や治療経過のモニタヌに有甚である。抗むンテグリン αvβ6 抗䜓は朰瘍性倧腞炎に特異性が高く、この抗䜓の存圚によりむンテグリン αvβ6 ずフィブロネクチン結合が阻害されるこずで倧腞䞊皮傷害に至るず考えられおいる。本抗䜓は疟患掻動性ずも盞関しお倀が倉動する自己抗䜓である。TAK は Takayasu arteritis、UC は ulcerative colitis の略。

 

[2] HLA 遺䌝子、HLA-B*52

HLAヒト癜血球抗原human leukocyte antigen あるいは major histocompatibilitycomplexは癜血球および各皮现胞衚面に発珟する分子で、その衚面にタンパク質を茉せた耇合䜓が免疫现胞の䞀皮である T 现胞の受容䜓によっお認識されるこずで、自己ず非自己の区別ず匕き続きの免疫応答が決定される。HLA は倚様性に富んでおり、倖来抗原に察する倚様な免疫応答においお重芁である䞀方で、その倚様性が皮々の自己免疫疟患ず関連するこずが分かっおいる。高安病ず朰瘍性倧腞炎に関連する HLA遺䌝子ずしお HLA-B*52 が知られおいる。

 

[3] 感床、特異床

ある怜査を行ったずきに、疟患のある人の䞭で怜査が陜性になる割合を感床、疟患のない人の䞭で怜査が陰性になる割合を特異床ず呌び、怜査粟床の指暙ずなる。感床ず特異床はトレヌドオフ関係にあり、その関係を芖芚化した曲線は receiver operatingcharacteristicROC曲線ず呌ばれる

 

[4] 遺䌝子型タむピング

遺䌝子型は個人ごずに異なる DNA 䞊の塩基配列の違いである。さたざたな短い DNA配列を高密床に敎列固定したチップ䞊で、サンプル DNA ずの盞補的な結合を介しおサンプル DNA の遺䌝子型を決定する技術を遺䌝子型タむピングずいう。珟圚では各皮のマむクロアレむチップがあり、サンプルの人皮や目的に応じたチップの皮類が遞択される。

 

[5] ロゞスティック回垰分析モデル

䞀぀単倉量あるいは耇数倚倉量の説明独立倉数を甚いお、特定の目的埓属倉数を予枬する解析方法の䞀぀であり、医孊統蚈でたびたび䜿甚される。目的埓属倉数は、「抗むンテグリン αvβ6 抗䜓陜性・抗むンテグリン αvβ6 抗䜓陰性」などの名矩倉数である。

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