未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、
「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。
根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定
(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。
このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。
人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。
以下に、最新の科学知見をご紹介します。
ALSにおける運動障害の一因か。
運動ニューロンのはたらき、過剰なTDP-43によって低下。
身体を動かすことができなくなってしまう難病、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、Amyotrophic lateral sclerosis、以下、ALSと略す)では、筋肉を収縮させる神経細胞「運動ニューロン」の機能が失われることが知られています。
ALSの運動ニューロンには、TDP-43(ティーディーピー 43)とよばれるタンパク質を含んだ凝集体が蓄積する、という特徴があります。TDP-43の凝集は、90%以上のALSにおいて認められますが、多くの場合TDP-43を産生する遺伝子(TARDBP遺伝子)に、変異がありません。この為、遺伝子変異によらずに生じるTDP-43の毒性のメカニズムを理解することが、重要な研究課題となっています。
浅川和秀特命准教授らは、カルシウムイメージングという技術を用いて、擬似運動中の熱帯魚ゼブラフィッシュの正常な運動ニューロンと、TDP-43を過剰に発現している運動ニューロンの神経活動を同時に計測して比較しました。その結果、TDP-43のタンパク質量が過剰になると、運動ニューロンの活動(神経興奮性)が低下することを発見しました(図)。
本研究によって、TDP-43のタンパク質量が変動することで運動ニューロンの機能が低下し、そのことがALSにおける運動障害の一因である可能性が示唆されました。
本研究は、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所(浅川和秀特命准教授、川上浩一教授)と、東京医科大学(半田宏特任教授)による共同研究グループによって実施されました。
図:TDP-43の過剰発現は、運動ニューロンの神経興奮性を低下させる
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