top of page

健康を科学で紐解く シリーズ143 「毎日お風呂に入れば「うつ」を予防できる」


未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、

「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。

根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定

(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。

このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。


以下に、最新の科学知見をご紹介します。


 



毎日お風呂に入れば「うつ」を予防できる

~毎日浴槽入浴すればうつ発症は0.76倍に低下

高齢者約3,200人の6年間の追跡調査~



 高齢者において「うつ」の発症は様々な疾患のリスクとなって、要介護状態に陥るきっかけになりその予防は重要です。そこで本研究では高齢者約3,200人の6年間の追跡調査より生活習慣としてのお風呂(浴槽の湯につかる入浴)のうつ発症の長期的予防効果を明らかにすることを目的として調査・解析しました。

その結果、週0-6回浴槽入浴する人と比べて、週7回以上浴槽入浴する人の6年後のうつの罹りやすさ(オッズ比)は0.76倍*で、週7回以上浴槽入浴することはうつ発症のリスクが有意に低くなっており、毎日浴槽入浴することで高齢者のうつ発症を予防できる可能性があることが分かりました。

(*冬の入浴回数による解析.有意差あり)


季節ごとの浴槽入浴回数とうつ発症の関連




背景


 高齢者においてうつの発症は様々な疾患のリスクとなり、要介護状態に陥るきっかけとなるため、その予防は喫緊の課題です。一方、日本においては浴槽の湯につかる特有の入浴法が多くの国民の生活習慣となっていますが、これまでこの生活習慣としての浴槽入浴と長期的なうつ発症との関連は明らかではありませんでした。


本研究は、大規模な6年間にわたる追跡研究によって生活習慣としての浴槽入浴が長期的なうつ発症への予防効果を明らかにすることを目的としました。




対象と方法


 Japan Gerontological Evaluation Study(以下,JAGES)の一環として2010年,2016年に調査対象となった全国14の自治体の65歳以上の11,882人のうち,自立しておりかつ老年期うつ病評価尺度Geriatric Depression Scale(以下,GDS) 4点以下でうつがなく、解析に必要なデータがそろっていて、夏の入浴頻度の情報のある3,220人,および冬の入浴頻度の情報がある3,224人をそれぞれ解析の対象としました。


コホート研究(追跡研究)として2010年に週0-6回の浴槽入浴をしている者と週7回以上の浴槽入浴をしている者の各群の6年後のGDSが5点以上となったうつ発症割合をそれぞれ求めました。他の要因の影響を考慮して浴槽入浴とうつ発症の関連を検討するために、ロジスティック回帰分析によって年齢,性別,治療中の病気の有無,飲酒の有無,喫煙の有無,婚姻状況,教育年数,等価所得を調整して多変量解析を行いオッズ比(うつの罹りやすさ)を求めました。




結果、結論


 6年後のうつ発症割合は、夏の浴槽入浴回数が週0-6回の者で12.9%、週7回以上の者で11.2%、冬の浴槽入浴回数が週0-6回の者で13.9%、週7回以上で10.6%であり、いずれも週7回以上の浴槽入浴をしている者でうつ発症割合が低く、特に冬の浴槽入浴との関連は統計学的有意差がありました(P=0.007)。

年齢や性別など他の多くの要因を考慮した多変量解析の結果、夏の浴槽入浴回数が週0-6回の者に対して週7回以上の者のうつの罹りやすさ(オッズ比)は0.84倍、冬の浴槽入浴回数が週0-6回の者に対して週7回以上の者のうつの罹りやすさ(オッズ比)は0.76倍で、いずれも週7回以上浴槽入浴をしている者はうつに罹りにくく、特に冬の浴槽入浴では統計学的有意差がありました(P=0.033)。


浴槽入浴の温熱作用を介した自律神経のバランス調整作用や睡眠改善などのうつ予防作用による習慣的実施の結果と推察されました。


うつ発症予防のため、高齢者へ、できれば毎日の浴槽入浴が勧められることが示唆されました。




本研究の意義


 今回、大規模な追跡調査で浴槽入浴がうつ発症の予防につながることが初めて分かりました。「気持ちが良い」「良く眠れる」といった入浴の短期的かつ主観的な作用だけでなく、浴槽入浴が将来のうつ発症を予防する重要な生活習慣であることが明らかになりました。


本研究は、浴槽入浴が高齢者の心身の健康維持のための重要な生活習慣であることを、医療や保健、福祉関係者だけでなく国民に広く認識してもらうためのエビデンスとなります。

Opmerkingen


Opmerkingen zijn uitgezet.
bottom of page