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健康を科学で紐解く シリーズ156 「超硫黄分子によるウイルスと慢性肺疾患の制御法を開発」


未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、

「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。

根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定

(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。

このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。


以下に、最新の科学知見をご紹介します。


 


超硫黄分子によるウイルスと慢性肺疾患の制御法を開発

ミラクル分子・超硫黄による病気のコントロールで未来型呼気医療を展開へ




発表のポイント


1.多彩な生理機能を持つミラクル分子である超硫黄注 1 が新型コロナウイルスやインフル

 エンザウイルス感染症のみならず、肺気腫・COPD や特発性肺線維症などの難治性

 肺疾患注 2 の制御因子・予防治療薬となる可能性があることを明らかにしました。


2.株式会社島津製作所との共同研究により、自然に吐く息(呼気)をサンプル(試料)とする

 「呼気オミックス」注 3による新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症の

 診断法の開発に成功しました。


3.今後、超硫黄分子と呼気オミックスを用いた、個別化医療、遠隔・在宅健康診断、各種

 疾病の診断・治療・未病予防などに応用し革新的な未来型医療を展開します。




概要


 新型コロナウイルスやインフルエンザ感染症および慢性難治性肺疾患(COPDや肺線維症)などの病態解明、高精度な診断、病期・病状の評価、重症化のリスク判定、予後・合併症の予測と診断、予防・治療薬の開発は喫緊の課題です。


 東北大学大学院医学系研究科環境医学分野の赤池孝章教授らの研究グループは、マウスを用いて超硫黄分子が新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症に対して強力な感染防御能を有し、難治性炎症性肺疾患である COPD・肺気腫・特発性肺線維症などの予防・治療効果を明らかにしました(図 1)。

また、株式会社島津製作所との共同研究により、自然に吐く息(呼気)を用いた無侵襲呼気オミックス解析法を開発し、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症の高精度な診断法を確立しました。


今後、呼気オミックスを、心血管・肺疾患、生活習慣病、動脈硬化、糖尿病などの代謝性疾患やがんなどの診断、健康管理、未病予防の遠隔医療などに展開し、未来型呼気医療の確立を目指します(図 2)。




研究の背景


 東北大学大学院医学系研究科環境医学分野 赤池孝章教授らの研究グループはこれまで、生体内に超硫黄分子を発見し、その多様な生理機能を探索・解明してきました。

また、2020 年からの新型コロナウイルスのパンデミックを契機に、ウイルスや超硫黄分子の代謝経路として呼気エアロゾルを用いた呼気オミックス分析の技術開発に取り組んできました。 (2020 年 10 月 16日プレスリリース)




今回の取り組み


 東北大学大学院医学系研究科環境医学分野の赤池孝章教授、同大学加齢医学研究所、熊本大学との共同研究により、ハムスターやマウスの新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス感染モデルおよびマウスの COPD・肺気腫・肺線維症モデルを用いて、超硫黄分子が新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症に対して強力な感染防御能を有することを明らかにしました。


また、難治性炎症性肺疾患として知られる COPD・肺気腫・特発性肺線維症などに対しても超硫黄分子は予防・治療効果を発揮することを明らかにしました(図 1)。

さらに、島津製作所との共同研究により、呼気オミックスによるウイルス診断や超硫黄代謝解析による多くの疾病の診断・未病予防・治療に資する無侵襲生体情報解析法を開発しました(図 2)。



図 1. 超硫黄分子による様々な肺疾患に対する保護効果

ウイルス感染症、慢性閉塞性肺疾患(COPD; 肺気腫)、特発性肺線維症(IPF)では、炎症性サイトカインによる慢性炎症と酸化ストレスがもたらされる。超硫黄分子は、抗ウイルス効果を発揮するだけでなく、炎症反応と酸化ストレスを強力に抑制し病態を制御することで、気道と肺に保護的役割を果たす。




図 2. 呼気オミックスによる革新的な生体情報モニタリング技術の開発

呼気中に含まれる超硫黄分子(ミトコンドリア超硫黄代謝)などの代謝物やウイルスを無侵襲・非接触的にモニタリングすることで日常的な健康管理のみならず感染症を含めた様々な病気をコントロールする未来型呼気医療を確立する。




今後の展開


 超硫黄分子にはエネルギー代謝改善や強力な抗酸化活性があることから、この成果を基盤にした「超硫黄ミラクル創薬」の社会実証が進んでいます。さらに、感染症や肺疾患のみならず、酸化ストレスが関わる心血管疾患、生活習慣病、動脈硬化、糖尿病などの代謝性疾患、アルツハイマー病などの神経変性疾患、がんなどの難治性疾患や加齢寿命制御による長寿医療への展開に期待が寄せられています。


本研究成果により、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症、および、がんを含めた全ての疾病の診断のみならず、呼気オミックスを活用した在宅での健康管理・健康診断など、遠隔医療による未病・予防と長寿に資する未来型呼気医療の開発の道が拓かれました。




用語説明


注1. 超硫黄(supersulfides):

ポリスルフィド構造を分子内に有する硫黄代謝物の総称。カテネーション・ポリスルフィド構造により、求核性と親電子性を併せ持ち、多彩な生物活性を示す。


注2. 難治性肺疾患: 肺気腫・慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructivepulmonary disease, COPD)や、病因や治療法が未だに確立されていない特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)などの肺疾患。


注3. 呼気オミックス:

従来の鼻や口(咽頭)からの試料採取・検査システムに替わる、自然に吐く息(呼気)を用いた無侵襲的な検査システムである。呼気オミックスは、呼気の中に存在するウイルスや、生体由来のタンパク質、代謝物を解析する最先端技術である。

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