未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、
「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。
根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定
(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。
このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。
人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。
以下に、最新の科学知見をご紹介します。
麻痺した手を思い通りに動かすAIロボット
― 脳卒中後の上肢運動機能を改善 ―
順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学 藤原俊之教授らの研究グループによる、「AIロボットリハビリテーションによる脳卒中後上肢運動機能の機能回復」に関する研究成果が、公開されました。
研究成果(ポイント)
1.世界初の「患者の意図を生体電気信号からAIが判別し手を動かすAIロボット」を用いた
脳卒中リハビリテーション治療
2.回復が困難である慢性期脳卒中患者の上肢運動機能を改善
3.脳卒中後の手のリハビリテーションにおける新たな治療法として期待
背景
脳卒中の後遺症より手足の麻痺などの後遺症が残る患者のうち、手の麻痺が実用レベルまで回復するのは15~20%にとどまると言われている。手の麻痺の残存は日常生活動作を広く妨げ、職業復帰等を妨げる原因ともなる。近年、ロボットがリハビリテーション分野でも応用されるようになってきたが、多くは患者の意図に関係なく決まった動作を繰り返し練習するものであったり、患者の動きをアシストするものであったため、重度な手の麻痺は回復が困難であった。
そこで自分では思うように手を動かせない重度の麻痺がある患者においても「患者の意図を生体電気信号からAIが判別し、麻痺した手を思い通りに動かすAIロボット」を開発し、脳卒中後の手の麻痺のリハビリテーションに用い、その効果を無作為化比較試験で検証した。
内容
AIロボットは麻痺した前腕に3対の電極を置き、脳から手に送られる電気信号のパターンをAIが解析することにより、重度な麻痺で手が動かない患者においても、患者が「指を伸ばそう」としているのか、「曲げよう」としているのか、それとも力を入れないように「リラックスさせよう」としているのかを読み取り、患者の意図に合わせて麻痺した手を動かす。
本研究には脳卒中発症後2か月以上経過した後に手の麻痺が残存している患者20名が参加した。参加者は無作為にAIロボット群と他動ロボット群に割り付けられ、AIロボット群では1回40分のAIロボットを使用して、自分の意図に合わせて指の曲げ伸ばしを行い、物を掴んだり、移動させる麻痺手のトレーニングを週2回、計10回行った。他動ロボット群では他動的に指の曲げ伸ばしを行う麻痺手のトレーニングを同様の回数を行った。AIロボット群ではトレーニング後に上肢運動機能の改善を認め、その効果はリハビリテーション終了4週後にも維持されていた。また日常生活での麻痺手の使用頻度においても改善を認めた。
本研究によりAIを用いた新しいリハビリテーションロボットが脳卒中後の麻痺手の機能を改善させることが示され、新たなリハビリテーション治療法として今後の発展が期待される。
今後の展開
本研究は、世界初の「患者の意図を生体電気信号からAIが判別し、麻痺した手を思い通りに動かすAIロボット」を用いた脳卒中リハビリテーション治療の効果を示した研究であり、今までの手法では回復が困難であるとされていた脳卒中後の麻痺手の回復を可能とする新しいリハビリテーション治療として期待されている。
すでに2022年5月18日付けで国内のクラスⅡ医療機器認証(認証番号 304AIBZX00014000)を取得しており、今後の臨床での使用が望まれる。
研究者のコメント
我々は常に障害の機能回復を目指す新しい治療法の開発を目指してきました。今回のAIロボット研究はその一部で、メルティンMMI社との共同研究により行われました。
世界初のAIロボットによる脳卒中後の上肢機能障害の改善効果を示すことができ、ニューロリハビリテーションのトップランナーとして今後も世界のリハビリテーション治療をけん引して行きたいと思います。
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