top of page
nextmizai

健康を科学で紐解く シリーズ188 「足首の捻挫をはじめとした足部と足首の傷害の予防に重要な腓骨筋群~


未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、

「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。

根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定

(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。

このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。


以下に、最新の科学知見をご紹介します。


 


足首の捻挫をはじめとした足部と足首の傷害の予防に重要な腓骨筋群は、

足部と足首を適格に動かすことで長腓骨筋、短腓骨筋に分けてエクササイズ

できる可能性が示されました




本研究成果のポイント


1.一般的に腓骨筋群という筋群は、「外がえし」と呼ばれる足首を外側に捻る働きがあり、

 スポーツ活動中に発生しやすい足首の捻挫を防ぐ重要な役割があります。


2.この筋群は一括りにされることが多いですが、細かく分けると「長腓骨筋」「短腓骨筋」

 という筋に分かれ、足首の捻挫の予防だけでなく、各筋は足部の問題で多い「偏平足」を

 防ぐ、「足部と足首の安定性」を高めるといった別々の役割があります。

 そこで本研究では、各筋を分けて筋のエクササイズができるか検討しました。


3.その結果、足首を「外がえし」するエクササイズでは「長腓骨筋」、足のつま先を外に向

 ける「外転」を意識したエクササイズでは「短腓骨筋」で、一時的な筋断面積の増大と

 一時的な疲労による筋力の低下が筋ごとに起こりました。筋断面積の増大と筋力の低下は

 今後の筋量と筋力の向上を示す変化であるとされており、また各筋で変化が起こったこと

 から筋を分けたエクササイズの可能性を示せました。


4.本研究の結果は、今後の足部と足首の傷害に対するより効率的な治療や予防アプローチに

 つながることが期待できます。




概要


1.長腓骨筋、短腓骨筋を分けたエクササイズを検討するために、長腓骨筋に対して足首を

 「外がえし」するエクササイズ、短腓骨筋に対して足首を「外転」するエクササイズを

 それぞれ別日に実施しました。


2.介入の効果は、超音波診断装置を用いた長腓骨筋と短腓骨筋の断面積および厚さの測定

 と、筋力計を用いた長腓骨筋と短腓骨筋の筋力測定を各エクササイズの前と直後、10、

 20、30 分後と継続して測定することで確認しました。


3.その結果、足首を「外がえし」するエクササイズ後には長腓骨筋、足首を「外転」する

 エクササイズ後には短腓骨筋で、今後の筋量と筋力の向上を示すとされる一時的な断面積

 の増大と疲労による筋力の低下という変化が起こったことから本エクササイズは各筋を分

 けたエクササイズとして有効であると考えられました。




背景


 一般的に腓骨筋群は、「外がえし」という足首を外側に捻る働きを持ち、不意に足首を内側に捻ることでスポーツ活動中によく発生する足首の捻挫を防ぐ重要な役割があります。

これまで腓骨筋群は一括りにされることが多かったですが、実際は細かく分けると「長腓骨筋」と「短腓骨筋」という 2 つの筋に分けることができ、足首の捻挫の予防だけではなく、長腓骨筋は「偏平足」を防ぎ、短腓骨筋は「足部と足首の安定性の向上」に役立ちます。このように足部と足首に対して長腓骨筋、短腓骨筋はそれぞれ異なる重要な働きをしています。そのため、長腓骨筋の働きが弱まると偏平足を助長し、短腓骨筋の働きが弱まると足部と足首の安定性が低下することで足部や足首の疲労骨折といったそれぞれ異なる問題につながります。

しかし、これまで長腓骨筋と短腓骨筋は、腓骨筋群と一括りにして足部と足首の傷害に対する治療や予防アプローチが行われており、長腓骨筋と短腓骨筋を分けたエクササイズは検討されていません。そこで本研究では、長腓骨筋がより働くとされる足首を「外がえし」させるエクササイズと、短腓骨筋がより働くとされる足のつま先を外に向ける動きである足首の「外転」を意識したエクササイズを実施した際の各筋のエクササイズ直後の筋形態と筋力の変化の違いを検証しました。




研究成果の内容


 本研究の流れを図 1 に示します。健常成人 22 名の右脚を対象に、足部の母趾球にあてたゴムチューブを足首の「外がえし」を意識して押し出す長腓骨筋エクササイズと、足首の「外転」を意識してゴムチューブを引っ張る短腓骨筋エクササイズを別日でそれぞれ実施しました。エクササイズ効果の確認のため、エクササイズ前と直後、10、20、30 分後時点で、超音波診断装置を用いた長腓骨筋、短腓骨筋の断面積と厚さの測定と、筋力計を用いた長腓骨筋と短腓骨筋の筋力の測定を実施しました(図 2)。


図1 本研究のアウトライン



図2 超音波診断装置を用いた長腓骨筋、短腓骨筋の断面積と厚さの測定と、

      筋力計を用いた長腓骨筋と短腓骨筋の筋力測定



 結果として、長腓骨筋エクササイズを実施した場合は「長腓骨筋」、短腓骨筋エクササイズを実施した場合は「短腓骨筋」の断面積と厚さの値が介入直後に増加し、各筋の筋力は直後に減少しました(図 3)。


図3 介入前と介入直後、10、20、30 分後時点での長腓骨筋、短腓骨筋の断面積

    および厚さと筋力の結果



 先行研究で、エクササイズ直後の一時的な筋断面積の増加は筋の損傷が原因の筋の腫れによるもので、今後の筋量や筋力の増加を示す変化と報告されています。本研究でみられた長腓骨筋および短腓骨筋への介入直後の筋の断面積と厚さの増加に関しても、先行研究と同様にエクササイズ直後の一時的な筋の腫れによるものであると考えられます。さらに、この一時的な筋の腫れが長腓骨筋エクササイズと短腓骨筋エクササイズに分けて実施することで、「長腓骨筋」と「短腓骨筋」に別々に起こったため、各筋を分けたエクササイズが可能であることが示唆されました。また、介入直後の筋力の低下はエクササイズ後の一時的な疲労によるもので合わせて、今後の筋量や筋力の増加を示す変化であると考えています。本研究は、長腓骨筋と短腓骨筋を分けたエクササイズの可能性を初めて示した内容であり、足部と足首の傷害に対するより効果的な治療や予防アプローチにつながることが期待できます。




今後の展開


 本研究では、長腓骨筋エクササイズと短腓骨筋エクササイズによる一時的な筋の腫れと筋力の低下の結果をもって、各筋を分けたエクササイズの可能性を示しました。しかし、実際に筋量と筋力の増加を起こすためには 6 週間以上の長期的なエクササイズを実施する必要があるといわれています。


 今後の展開として、今回実施した長腓骨筋エクサイサイズと短腓骨筋エクササイズを長期的に実施し、その際にも各筋を分けたエクササイズ効果が生じるかを確認したいと考えています。そして、本エクササイズが長腓骨筋、短腓骨筋を分けたエクササイズ手法として有効か検討し、足部と足首の傷害に対する治療や予防アプローチとして確立できるよう研究を進めていきます。

Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page