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健康を科学で紐解く シリーズ203 「スギヒラタケ摂取による急性脳症の化学的解明」


未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、

「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。

根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定

(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。

このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。


以下に、最新の科学知見をご紹介します。


 


スギヒラタケ摂取による急性脳症の化学的解明

-発症における3つの成分の関与-




 静岡大学農学部の河岸洋和特別栄誉教授は、2004 年に発生したスギヒラタケ急性脳症を長年にわたり研究し、化学的に解明しました。




研究のポイント


1.スギヒラタケは、東北、北陸、中部地方を中心に広く食されていた美味なキノコ


2.ところが、2004 年秋に、このキノコの摂取により、急性脳症が発生(死亡例 17)


3.この事件は戦後最悪の食中毒事件


4.その後厚生労働省は研究班を組織したが「原因不明」と結論


5.研究班の班員であった河岸は、その後も研究を継続


6.このキノコから、タンパク質である pleurocybelline(PC)と

 Pleurocybella porrigenslectin(PPL)、低分子である pleurocybellaziridine(PA)の

3つの物質を発見


7.この3つの成分がこの脳症の発症に関与することを動物実験で証明


 スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)は日本で広く食されていましたが、2004 年秋、日本でこのキノコの摂取による急性脳症が発生し 17 名の患者が亡くなりました。

河岸らは、この急性脳症の発症機構を化学的に明らかにするために、キノコの研究を続けてきました。その結果、タンパク質である pleurocybelline(PC)と Pleurocybella porrigens lectin(PPL)、低分子である pleurocybellaziridine(PA)の 3 つの物質を発見しました。

そして、「3成分による急性脳症発症機構」を提唱しました。すなわち、PC と PPL が複合体を形成することによってタンパク質分解酵素活性を示し、血液-脳関門を破壊し、PA によって、このキノコによる特異な症状を惹起することを動物実験などで明らかにしたのです。

この事件は戦後最悪の食中毒事件と言われています。そして、3つもの物質が毒性に関与する食中毒例はこれまで見受けられません。今後、起こるかもしれない前例の無い食中毒の解明のためのモデルケースになると期待されます。




研究概要


 スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)は日本で広く食されていたが、2004 年秋、日本でこのキノコの摂取による急性脳症が発生し 17 名の患者が亡くなった。私たちは、この急性脳症の発症機構を化学的に明らかにするために、キノコの研究を続けてきた。

その結果、タンパク質である pleurocybelline(PC)と Pleurocybella porrigens lectin(PPL)、低分子であるpleurocybellaziridine(PA)の 3 つの物質を発見しました。

そして、「3成分による急性脳症発症機構」を提唱し、実証しました。すなわち、PC と PPL が複合体を形成することによってタンパク質分解酵素活性を示し、血液-脳関門を破壊し、低分子である PA によって、このキノコによる特異な症状を惹起することを動物実験などで明らかにしたのです。




研究背景


 スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)は日本で広く食されていましたが、2004 年秋、日本でこのキノコの摂取による急性脳症が報告された。

厚生労働省は研究班を組織したが「原因不明」と結論した。この研究班の班員であった河岸は、その後も農林水産省レギュラトリーサイエンス新技術開発事業や科研費基盤研究 A などの研究代表者として遂行していた。




研究の成果


 このキノコから、タンパク質である pleurocybelline(PC)と Pleurocybella porrigenslectin(PPL)、低分子である pleurocybellaziridine(PA)の 3 つの物質を見出した。そして、PCと PPL が複合体を形成することによってタンパク質分解酵素活性を示し、血液-脳関門を破壊し、低分子である PA によって、このキノコによる特異な症状を惹起する、という「3成分による急性脳症発症機構」を提唱した。これらの結果は 8 報の論文にまとめた。8報のうち動物実験を中心とした最後の論文は本学ホームページで既に紹介されている。




今後の展望と波及効果


 この事件は戦後最悪の食中毒事件と言われている。そして、3つもの物質が毒性に関与する例は見受けられない。今後、起こるかもしれない前例の無い食中毒の解明のためのモデルケースになるかもしれない。




用語説明


スギヒラタケ:学名 Pleurocybella porrigens、スギヒラタケ属は一属一種である。


キシメジ科スギヒラタケ属のキノコの一種であり、スギワカイ、スギワケ、スギカヌカ、スギカノカ、スギモタシ、スギミミ、スギナバ、シラフサ、ミミゴケ、オワケなど地方により様々な俗称がある。

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