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健康を科孊で玐解く シリヌズ227  「骚の「分解」ず「安定化」が䜜り出す骚芏則化構造が発揮する新機胜」


未圚 Clinics that live in science. では「生きるを科孊する蚺療所」ずしお、

「健康でいるこず」をテヌマに蚺療掻動を行っおいたす。

根本治癒にあたっおは、病理であったり、真の原因郚䜍䜓性機胜障害[SD]の特定

怜査が重芁なキヌ鍵であるず考えおいたす。

このような芳点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉匷しおいたす。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非垞に耇雑で、科孊が発達した珟代医孊においおも未知な䞖界にありたす。


以䞋に、最新の科孊知芋をご玹介したす。


 


骚内郚の芏則構造は匷い抗菌性をもっおいた

金属D プリンティングによる骚圢成誘導で実蚌

―骚の「分解」ず「安定化」が䜜り出す骚芏則化構造が発揮する新機胜―




研究成果のポむント


1.健党な骚基質配向性※1(コラヌゲン線維/アパタむト結晶が䞀方向に芏則的に配列する

 構造)は、骚圢成の早期~長期にわたり高い感染抵抗性を瀺すこずを実蚌。


2.骚基質配向性が、骚の力孊的匷床を高めおいるだけではなく、匷力な感染抵抗胜を瀺す

 こずを発芋。


3.金属 3D プリンティング※2による最適溝構造の導入は、早期には骚芜现胞※3配向化に

 より倧腞菌の付着を抑制、さらに長期的には抗菌タンパク質の産生により倧腞菌を溶解

 し、高い感染抵抗性を発揮するこずを発芋。


4.骚の圢成ず分解の骚再生機構に着目するこずで、骚基質配向ず现菌感染ずの関連を解明

 した。


5.骚基質配向化を誘導するむンプラントデザむンは、感染抵抗性ずいう新たな機胜をも぀

 こずを芋出した画期的発芋。




抂芁


 倧阪倧孊倧孊院工孊研究科の束垣あいら准教授、倧孊院生の枡邊皜倪さん(博士埌期課皋)、䞭野貎由教授らの研究グルヌプは、岡山倧孊倧孊院医歯薬孊総合研究科の束本卓也教授ずの共同研究によっお、骚内郚の芏則化した原子配列構造(骚基質配向性)が、现菌感染ぞの高い抵抗性を瀺すこずを発芋したした。金属 3D プリンティングにより䞀方向性の最適な溝構造を導入するこずで、溝䞊で䞀方向にそろった骚芜现胞は生䜓内ず類䌌した芏則化した骚基質を生み出したす。骚が力孊的匷床を担保するためには、こうした骚基質の配向化構造が骚密床以䞊に重芁です。今回、䞭野教授らの研究グルヌプは、金属 3D プリンティングを駆䜿するこずで埮现な溝構造を䜜補し、骚芜现胞の培逊詊隓により、配向化骚基質の圢成が现菌感染を防止する新しい機胜をも぀こずを発芋したした。配向化した骚芜现胞は、现菌の现胞膜を溶解する抗菌ペプチドを倚く産生するこずで抗感染特性を発揮したず考えられたす。


 本成果により、配向化骚基質骚を誘導する骚デバむスでは、骚治癒を早期に健党化するだけでなく、むンプラント埋入による術埌感染の抑制やむンプラント呚囲炎などの感染抑制にも効果を発揮するず期埅され、骚疟患の早期回埩を可胜にするこずが期埅されたす。


図 金属 3D プリンティングによる配向性溝構造は、早期には骚芜现胞配向化により倧腞菌

  の付着を抑制、さらに長期的には抗菌タンパク質の産生により倧腞菌を溶解し、高い感

  染抵抗性を発揮する




研究の背景


 脊怎スペヌサや人工関節などの骚デバむスの埋入においお、術埌感染症は重節な合䜵症の䞀぀です。術埌感染症が発症するず、骚デバむスを入れ替える再眮換手術が必芁ずなる堎合が倚く、臚床の珟堎からは術埌感染症の予防が匷く望たれおいたす。埓来䜿甚されおいる抗菌性むンプラントは现胞毒性が報告されおおり、長期的に安党性が懞念されおいたす。

たた、既存の抗菌性衚面凊理では、抗菌成分である金属むオンの溶出速床は倧きく、抗菌効果の持続時間が短いこずも課題でした。


 䞭野教授らの研究グルヌプでは、骚の力孊機胜は骚量・骚密床だけでは決たらず、特に再生骚では骚のコラヌゲン/アパタむト配向性(骚基質配向性)によっお匷く支配されるこずを、材料工孊の芖点から明らかにしおいたす。すなわち、骚の力孊的な機胜を高めるためには、骚基質配向性の敎った質の高い骚を圢成するこずが必芁です。

研究グルヌプは、健党骚に類䌌したコラヌゲン/アパタむト配向化骚基質の早期誘導が、遅発性の術埌感染の抑制に有効であるず仮説を立お、配向化骚基質圢成が现菌感染に及がす圱響の解明を目指したした。


図 1 䜜補した溝基板䞊での骚芜现胞およびコラヌゲン基質配向化




研究の内容


 䞭野教授らの研究グルヌプでは、骚基質配向性が骚を䜜る骚芜现胞の配列化により達成されるこずを発芋し、これを人為的に誘導する材料を開発したした。现胞制埡のための埮现構造の圢成に欠かせない金属 3D プリンティングの技術を掻甚したした。チタン合金基板衚面におおよそ 100ÎŒm幅の溝構造を䜜補し、现胞機胜の怜蚌にはマりス頭蓋冠由来の初代骚芜现胞の培逊詊隓を実斜したした。现胞培逊埌に倧腞菌ず共培逊を行うこずで、现胞機胜が现菌の付着や生存、増殖に䞎える圱響を解明する実隓系を構築したした。溝構造䞊で骚芜现郚が䞀方向配列化しおいるこずが実蚌され、さらに骚芜现胞が産生するコラヌゲン基質も同方向ぞず配向化しおおり、生䜓骚ず類䌌した配向化骚基質を再珟するこずができたした(図1)。

骚芜现胞ず倧腞菌の共培逊モデルでは、培逊埌の倧腞菌数を、寒倩培地培逊法を甚いたコロニヌ数の蚈枬により評䟡したした。その結果、溝基板䞊で配向化した骚芜现胞は、倧腞菌の付着を倧幅に抑制するこずが芋出されたした(図 2)。さらに長期の培逊で骚を圢成するこずで、倧腞菌数を倧幅に軜枛するこずができたす。骚基質配向化により倧腞菌抑制を制埡する因子の特定のために、共培逊埌の培地䞊枅を回収し、骚芜现胞から産生された生物孊的因子の産生量を定量評䟡したした。するず、抗菌タンパク質の䞀皮であるβdefensin2および3が倚く合成され、现胞倖ぞず攟出されおいるこずが瀺されたした。これらの抗菌タンパク質は、现菌の现胞膜を溶解し、その感染機胜を抑制する働きがありたす。今回の結果より、骚が本来も぀配向化基質が、高い感染抵抗性をも぀こずが䞖界で初めお明らかになりたした。

今回の成果は、骚基質配向化デバむスがこれたでの骚バむオマテリアルにはなかった早期の骚健党化ずすぐれた感染抵抗性をあわせも぀こずから、実甚的には医療デバむスの高機胜化に貢献するこずが期埅されたす。すでに同グルヌプの開発した埋入初期から骚基質の配向化誘導を可胜ずする脊怎スペヌサが倧芏暡臚床応甚されおおり、こうした関連デバむスにずっお術埌の感染抑制が匷く期埅されたす。


図2 现胞・骚基質配向化による现菌感染抵抗性の発珟




本研究成果の意矩


 本研究成果は、骚の力孊的機胜に盎結する骚基質配向性が感染抵抗性ずいう新たな機胜を有するこずを発芋した斬新な成果です。骚量・骚密床をタヌゲットずしたこれたでの骚医療デバむスの蚭蚈抂念を根底から芆し、早期の骚健党化ず感染防止をタヌゲットずした新たなデバむス蚭蚈指針を提䟛したす。骚疟患の早期治癒を可胜ずするのみならず、感染を起点ずしおしばしば問題ずなるデバむスの緩みを改善し、患者の身䜓的・粟神的・費甚的負担を軜枛し早期の退院・瀟䌚埩垰(QOL向䞊)を促すこずができ、それにずもない医療費の䜎枛にも寄䞎するず期埅されたす。




䞭野教授のコメント


 骚匷床を本質的に支配する骚基質配向化に着目し研究に取り組んできたした。健党な骚が生たれながらにも぀配向化構造は、现菌感染に察する生䜓防埡の仕組みたでも぀、私たちが本来的に備えた芏則正しい機胜構造であるこずがわかりたした。今回の成果で、骚基質配向化を促進するための新たな骚医療デバむスが感染防止にたで働き、骚治癒に匷く圹立぀こずが蚌明されたこずで、改めお骚基質配向性治療の重芁性が認識されたした。研究成果が䞖界䞭の倚くの患者さんの健康ず犏祉の増進に貢献し、本邊の医療産業の掻性化に぀ながるこずを期埅しおいたす。




甚語説明


※1 骚基質配向性

骚の䞻成分であるコラヌゲン/アパタむトの方向性は、長管骚では骚軞に沿っお優先配列する。アパタむトは六方晶系の結晶構造をもち、結晶方䜍に匷く䟝存した力孊特性を瀺す。骚基質配向性は、骚郚䜍に非垞に匷く䟝存しお倉化し、骚の力孊機胜を支えおいる。


※2 金属 3D プリンティング

耇雑で粟緻な䞉次元構造を䜜補可胜なテクノロゞヌ。今回甚いた方法は、粉末を出発材料ずし、レヌザで粉末を遞択的に溶かしお固めた局を積局しおいくレヌザ粉末床溶融結合法。


※3 骚芜现胞

コラヌゲンを分泌し、アパタむトの沈着により骚を圢成する现胞。骚芜现胞は接着斑によりその现胞配列化を制埡しおおり、现胞配列化方向に沿ったコラヌゲン/アパタむト配向化構造を構築する。

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