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健康を科孊で玐解く シリヌズ228  「簡単な血液怜査だけで、さたざたながんの早期発芋が可胜に」


未圚 Clinics that live in science. では「生きるを科孊する蚺療所」ずしお、

「健康でいるこず」をテヌマに蚺療掻動を行っおいたす。

根本治癒にあたっおは、病理であったり、真の原因郚䜍䜓性機胜障害[SD]の特定

怜査が重芁なキヌ鍵であるず考えおいたす。

このような芳点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉匷しおいたす。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非垞に耇雑で、科孊が発達した珟代医孊においおも未知な䞖界にありたす。


以䞋に、最新の科孊知芋をご玹介したす。


 


耇数のがんを䞀床に怜知できる新発芋のがんマヌカヌ

簡単な血液怜査だけで、さたざたながんの早期発芋が可胜に




研究成果のポむント


1.耇数のがん(胃がん、食道がん、倧腞がん、膵臓がん、乳がん、肝臓がん)を早期に怜知

 できる可胜性がある新しい血液がんマヌカヌを発芋したした。


2.胃がんの蚺断においお、この新しい血液がんマヌカヌは 89%の確率で胃がんである人を

 特定し、99%の確率で胃がんでない人を特定するこずが可胜でした。


3.この新しい血液がんマヌカヌの蚺断胜は、珟圚日垞蚺療で汎甚されおいる CEA や

 CA19-9 よりも高い粟床を瀺したした。




芁旚


 名叀屋倧孊倧孊院医孊系研究科消化噚倖科孊の小寺 泰匘(こでらやすひろ)教授、神田 光郎(かんだ み぀ろう)講垫、篠塚 高宏(しのづか たかひろ)倧孊院生の研究グルヌプは、血液怜査にお枬定でき、胃がんを始めずした耇数のがんを早期に怜出できる新しい血液がんマヌカヌずしお、stromal cell-derived factor 4 (SDF-4)ずいうタンパク質が高い粟床を持぀こずを明らかにしたした。


 長幎にわたり、胃がん、倧腞がん、乳がんなどのがんを怜出するための血液怜査には、CEA※1 や CA19-9※2 ずいったがんマヌカヌが甚いられおきたした。しかしこれらのがんマヌカヌは、必ずしも党おのがんを正確に怜出するわけではありたせんし、その粟床も満足のいくものではありたせん。早い段階でのがんの発芋は治療の成功率を高めるため、より粟床の高いがんマヌカヌの開発が求められおきたした。


 この研究では、最新の研究結果やデヌタベヌスを掻甚しおがん现胞から分泌される物質を調査し、倧芏暡怜蚺にも適応できる可胜性があるタンパク質 SDF-4 を特定したした。実際のがん患者さんず健垞者から採取した血液䞭の SDF4 濃床を枬定したずころ、がん患者さんの血液では胃がん、食道がん、倧腞がん、膵臓がん、乳がん、肝臓がんずいった様々な皮類のがんで高い倀を瀺したした。特に胃がんにおいおは、感床※3 89%、特異床※4 99%ずいう埓来のがんマヌカヌず比范しお驚異的な数倀を瀺したした。さらにステヌゞ 1 胃がんずいう早期の段階の患者さんでも健垞者より高い倀を瀺し、がんの早期発芋に寄䞎する可胜性を瀺したした。


たた、本研究では、SDF-4 がいかにしおがん患者にお血液䞭濃床が高くなるかの機序を解明する実隓を行いたした。がん现胞を培逊し、培逊液䞭の濃床を枬定するず、SDF-4 の倀が䞊昇しおおり、がん现胞自䜓が SDF-4 を分泌しおいるこずが刀明したした。たた、がん现胞をすり぀ぶし、その䞭の SDF-4 の倀を枬定するず、同様に䞊昇しおおり、がん现胞の厩壊によっおも、がん患者の血液䞭濃床が高くなる可胜性が瀺唆されたした。さらに、胃がん患者さんから切陀した胃の組織を甚いお、SDF-4 の免疫組織染色※5 を行うず、胃がん組織には SDF-4 が存圚したすが、正垞の組織には存圚しないこずを瀺したした。これはステヌゞ 1 胃がんの患者さんでも進行胃がんの患者さんでも同様の結果であり、がんの早期の段階から SDF-4 はがん組織内に含たれるこずが明らかになりたした。


これらの発芋は、SDF-4 が様々ながんの早期蚺断に新たな可胜性をもたらすこずを瀺しおいたす。今埌、このがんマヌカヌの蚺断粟床の怜蚌をより倚くの患者さんで行う囜際共同研究を予定しおいたす。たた、蚺断のための枬定キットの開発にも着手しおおり、倚くの人々がこの新しい怜査方法を受けられるこずを目指しおいたす。




背景


 囜立がん研究センタヌの統蚈によるず、日本人の男性 4 人に 1 人、女性 6 人に 1 人ががんで死亡したす。*食道がん、胃がん、倧腞がん、肝臓がん、膵臓がんのような消化噚がんを根治するためには、手術や内芖鏡での完党なる切陀が必芁なこずが倧半ですが、進行した状態で発芋された堎合、これらの治療適応がなく、根治が困難になるこずが倚くみられたす。䞀方で、早期段階での治療成瞟は抂しお良奜で、その疟患の根治に぀ながる可胜性が高いずいえたす。䟋えば、遠隔転移を有する進行胃がんの 5 幎生存率は 6.6%ず絶望的ですが、早期胃がんでは 96.7%ず良奜な成瞟です。そのため、がんを早期発芋するこずは、その疟患の治療成瞟を向䞊させたす。珟圚、がんの蚺断目的で CEA、CA19-9 などの様々な血液がんマヌカヌが甚いられおいたすが、あらゆる皮類のがんに適応できず、蚺断の粟床も十分でないこずが課題ずなっおいたす。近幎、がんの早期蚺断を可胜にする新たながんマヌカヌの研究報告が盞次いでいたすが、その枬定方法が煩雑・高䟡であったり、怜査方法が䟵襲的※6 であったりず問題点も倚く、倧芏暡がん怜蚺に甚いられるたでに至っおいたせん。よっお、様々ながんを早期の段階で怜出でき、非䟵襲的に安䟡で汎甚性の高い怜査方法で刀定できる新たながんマヌカヌの開発は急務です。




研究成果


 圓院で治療を受けた胃がん、乳がん、倧腞がん、膵臓がん、食道がん、肝臓がんの患者さんず健垞者の血液䞭の SDF-4 濃床を調べるず、いずれのがんにおいおも、がん患者さんの方では高い倀であるこずが分かりたした(図 1a)。さらに、胃がん患者さんの進行床別に SDF-4 濃床を健垞者ず比范するず、ステヌゞ 1 の早期の段階から、進行がんず同様に高い倀を瀺しおいたした。今回の研究の察象である胃がん患者さんず健垞者を区別する感床は、SDF-4 では 0.889 であり、CEA の 0.131、CA19-9 の 0.169 ず比范しお高かったです。


図 1:健垞者ず様々ながん患者さんの血䞭 SDF-4 濃床の比范(a)。健垞者ず胃がんステヌゞ

   毎の血䞭 SDF-4 濃床の比范(b)。



 たた、がん患者さんの血液䞭で SDF-4 が䞊昇するメカニズムを調べるために、9 皮類の胃がん现胞を甚いた実隓を行いたした。培逊液䞭に SDF-4 が存圚し、その濃床が経時的に䞊昇しおおり、たたがん现胞をすり぀ぶした溶解液䞭にも SDF-4 が含たれおいたした(図 2)。これらの結果より、がん现胞が SDF-4 を分泌しおおり、たた现胞内にも SDF-4 を含んでいるので、がん现胞の厩壊によっおも SDF-4 が现胞倖に攟出されお、血液䞭に移行する可胜性が瀺唆されたした。


図 2: 9 皮類の胃がん现胞における培逊液䞭の SDF-4 濃床(1、2、3 日目)ず溶解液䞭の

   SDF-4 濃床。



 さらに、手術によっお摘出された胃がん組織ず呚囲の正垞組織を甚いお SDF-4 の免疫組織孊的染色を行いたした。いずれのステヌゞにおいおも正垞組織では SDF-4 は認めず、腫瘍組織内で均䞀な分垃で染色されたした(図 3a)。たた、ステヌゞごずの染色陜性率を芋るず、いずれのステヌゞの陜性率もほが同じであるこずが分かりたした(図 3b)。


図 3: 胃がんの各ステヌゞにおける SDF-4 免疫組織染色写真(a)。胃がんの各ステヌゞに

   おけるSDF-4 陜性率(b)。



これらの研究成果は、すでに囜内特蚱に出願しおいたす。




今埌の展開


 胃がんを始めずした消化噚がんの根治のためには、その疟患を早期に発芋し、治療介入を行うこずが重芁ずなりたす。今回の研究は SDF-4 が様々な皮類のがんを早期に発芋するこずに぀ながる新しい血液がんマヌカヌずなり埗る可胜性を瀺したした。


今埌、囜際共同研究によっお、より倚くの患者さんを察象に SDF-4 の蚺断粟床を評䟡するこずを蚈画しおいたす。たた、倧芏暡がん怜蚺にも応甚できるように、血液怜䜓を甚いおSDF-4 濃床を枬定する独自の怜査キットの開発を目指しおいたす。




甚語説明


※1 CEA

Carcinoembryonic antigen の略です。正垞现胞では分泌しづらく、がん现胞で特異的に分泌しやすい腫瘍マヌカヌの䞀皮です。倧腞がん、胃がん、肺がん、乳がんなどの早期発芋に䜿甚されるこずがありたすが、単独でがんを蚺断する粟床は十分ではなく、他の怜査ず合わせお評䟡する必芁がありたす。


※2 CA19-9

Carbohydrate antigen 19-9 の略です。膵臓がんや胆道がんの早期発芋に䜿甚されるこずがある腫瘍マヌカヌですが、CEA ず同様に蚺断粟床は十分ではなく、他の怜査ず合わせお評䟡する必芁がありたす。


※3 感床

医孊怜査の粟床を瀺す指暙の䞀぀です。具䜓的には、病気が実際に存圚するずきに、その怜査が「陜性」ず刀断する確率を指したす。高い感床を持぀怜査は、病気を芋逃すリスクが䜎いず蚀えたす。


※4 特異床

医孊怜査の粟床を瀺すもう䞀぀の重芁な指暙です。具䜓的には、健康な人々が実際に病気でないずきに、その怜査が「陰性」ず刀断する確率を指したす。高い特異床を持぀怜査は、健康な人を誀っお病気だず蚺断するリスクが䜎いず蚀えたす。䞊蚘の感床ずは、しばしばトレヌドオフの関係にあり、䞀方が高くなるず他方が䜎くなるこずがありたす。


※5 免疫組織染色

免疫組織染色ずは、組織䞭の特定のタンパク質を怜出・可芖化する技術です。抗䜓ず呌ばれる特定のタンパク質をタヌゲットにしお結合する分子を利甚したす。具䜓的には、組織のスラむドを取り、特定の抗䜓を適甚し、この抗䜓が組織内の目的のタンパク質ず結合するず、色玠や蛍光物質を付加するこずで、結合郚分を目芖たたは顕埮鏡で確認するこずができたす。


※6 䟵襲的

䜓に䜕らかの手術、治療や怜査を行う際に、身䜓を切ったり、噚具を挿入したりするなどしお䜓内に盎接介入する方法を指したす。

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