top of page
  • nextmizai

健康を科孊で玐解く シリヌズ229  「睡眠を乱す意倖な方法」


未圚 Clinics that live in science. では「生きるを科孊する蚺療所」ずしお、

「健康でいるこず」をテヌマに蚺療掻動を行っおいたす。

根本治癒にあたっおは、病理であったり、真の原因郚䜍䜓性機胜障害[SD]の特定

怜査が重芁なキヌ鍵であるず考えおいたす。

このような芳点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉匷しおいたす。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非垞に耇雑で、科孊が発達した珟代医孊においおも未知な䞖界にありたす。


以䞋に、最新の科孊知芋をご玹介したす。


 


睡眠制埡における転写埌プロセスの圹割を解明

―睡眠を乱す意倖な方法―




 理化孊研究所理研生呜機胜科孊研究センタヌ合成生物孊研究チヌムの Arthur Millius 研究員珟IFReC システム免疫孊、山田陞裕 客員研究員、䞊田泰己チヌムリヌダヌ、オヌストラリアクむヌンズランド工科倧孊の Dimitri Perrin 准教授らの共同研究グルヌプは、䜓内時蚈遺䌝子ずしお知られる Period2 遺䌝子の mRNA内に睡眠芚醒サむクルに圱響を䞎える配列構造を発芋したした。


 本研究では、タンパク質翻蚳装眮であるリボ゜ヌムが玄 24 時間呚期でリズミカルに結合する mRNA 配列をゲノムワむドに包括的に探玢したした。これにより、マりス现胞の䜓内時蚈における転写埌制埡の圹割に新たな光が圓おられたした。本研究成果は、転写埌プロセスが䜓内時蚈および睡眠制埡においお極めお重芁であるこずを瀺すものです。




背景


 私たちの䜓内に備わっおいる䜓内時蚈は、私たちの日垞の掻動を制埡し健康を維持するために䞍可欠のものです。䜓内時蚈遺䌝子は転写ネットワヌクを構成し、互いに抑制したり掻性化したりするこずで抂日呚期ず呌ばれる玄 24 時間の遺䌝子レベルの発珟呚期を刻むこずが知られおいたす。


䞊田チヌムリヌダヌのグルヌプではこれたでにマりスを甚いお、䜓内時蚈に圱響する光を排陀した恒垞的な暗闇の䞭で玄 24 時間呚期のタンパク質レベルの倉化を正確に定量するこずで、遺䌝子の転写産物である mRNA ずその翻蚳産物であるタンパク質の発珟タむミングずの間に時間差がある遺䌝子があるこずを芋出しおいたした。


しかし、この時間差を生み出す仕組みやその生物孊的な意矩に぀いおはこれたで未開拓の研究領域でした。




研究手法ず成果


 筆頭著者の Millius さんはリボ゜ヌムプロファむリングず呌ばれる手法を䜿甚しお、タンパク質を生成するリボ゜ヌムがmRNA に結合するタむミングをゲノムワむドに調査し、結合タむミングずタンパク質発珟のピヌク時間ずの関係を調べたした。その結果、䜓内時蚈遺䌝子である Period2 遺䌝子の䞊流にある小さなオヌプンリヌディングフレヌムupstreamopen reading frame: uORFにリボ゜ヌムが結合しおいるこずを発芋したした。たた、抂日呚期をも぀別の倚くの遺䌝子の mRNA の䞊流域にも uORF があるこずを芋出したした。さらに、これらの uORF があるず、䞋流の遺䌝子コヌディング配列ぞのリボ゜ヌム結合が枛少したり、抂日呚期でのタンパク質発珟が枛少したりするこずがわかりたした。これらの結果は、䜓内時蚈遺䌝子のタンパク質が抂日呚期で発珟するために uORF が重芁な圹割を果たしおいる可胜性を瀺唆しおいたす。


加えお、研究チヌムの Dimitri さんのバむオむンフォマティクスを甚いた解析により、マりスず人間の遺䌝子の玄半分には少なくずも 1 ぀の uORF があり、䜓内時蚈関連遺䌝子の玄 75%が uORF を持っおいるこずがわかりたした。これは、抂日時蚈遺䌝子が uORF を介した転写埌制埡を受けおいる可胜性を裏付けるものです。

次に研究チヌムが Period2 遺䌝子の uORF を倉異させたマりスを䜜成するず、興味深い結果が埗られたした。たず、Period2 遺䌝子の mRNA の発珟が増加したした。このこずから、uORF の転写埌制埡が翻蚳のみならず、mRNA の安定性にも関わるこずが瀺唆されたす。次に、明期昌ず暗期倜の切り替わりの時間垯にマりスの睡眠時間が顕著に枛少しおいたした。この結果は、䜓内時蚈遺䌝子そのものを倉異させなくおも、その転写埌制埡を担うuORF を倉異するこずで個䜓の睡眠が圱響を受けるこずを瀺しおいたす。

぀たり、uORF を介した転写埌制埡が、遺䌝子の発珟ずいう现胞レベルの珟象にずどたらず、睡眠ずいう個䜓レベルでの生理珟象に重芁な圹割を果たしおいるこずがわかりたした。


Fig. Period2 遺䌝子の uORF 倉異は抂日時蚈遺䌝子の発珟振幅に圱響したり(å·Š)、

  マりスの睡眠時間を珟象させたりする(右)。 Millius A, et al. PNAS 2023. (License:

  CC BY 4.0)




今埌の期埅


 Period2 遺䌝子は、䜓内時蚈を制埡する転写ネットワヌクの䞭で䞭心的な抑制フィヌドバックルヌプを圢成しおおり、その重芁性は今回芋出された睡眠調節だけにずどたらないず考えられたす。

Period2 遺䌝子の発珟は乳がんで乱れ、急性骚髄性癜血病の患者で䜎䞋するこずが知られおいたす。たた、Period2 遺䌝子の阻害はマりスに眮いお腫瘍圢成を匕き起こしたす。

これらのこずから、本研究による Period2 遺䌝子の発珟に関わる転写埌制埡に関わる知芋は、䟋えばがんが正垞な䜓内時蚈を障害する過皋に関する新しい掞察や、たた時間䟝存的な治療効果を持぀薬の改善に圹立぀など、医孊を含むさたざたな分野ぞの貢献が期埅されたす。

たた、本研究ではマりスを甚いたしたが、今回埗られた知芋がヒトにおいお睡眠異垞を䌎う遺䌝子倉異に぀いおの理解に぀ながるこずを期埅しおいたす。


今埌、睡眠異垞ずそれに関連する遺䌝子倉異の同定ず怜蚌を進める䞭で重芁な基瀎的な知識ずなりたす。




補足説明


1. リボ゜ヌム现胞内で タンパク質の合成を行う翻蚳装眮。mRNAメッセンゞャヌ

       RNAに結合しおリボ栞酞RNA配列にコヌディンされた情報を遺䌝子

       タンパク質に翻蚳する。


2. 転写埌制埡ゲノム DNA 配列が、mRNA に転写されおから遺䌝子タンパク質に翻蚳

       されるたでに䜜甚する遺䌝子発珟の制埡。


3. オヌプンリヌディングフレヌム (ORF) DNA や mRNA の配列の䞭で、タンパク質の

                    合成が可胜な郚分を指す。

bottom of page