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健康を科学で紐解く シリーズ4   「動脈硬化の原因」

更新日:2023年6月25日

未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。

根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。

このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。


以下に、最新の科学知見をご紹介します。


 


動脈硬化の原因を発見



研究の背景


 動脈硬化症はガンに次いで人間の死因の多くを占める病気ですが、その重要な原因のひとつは、アテローム(脂質と繊維質・細胞の死骸のかたまり)が蓄積することです。

アテローム形成は食生活と密接な関係があるため、血液中で脂質を運搬する種々のリポタンパク質、とくにLDL・悪玉コレステロールがその要因であろうと考えられてきましたが、大規模な疫学調査でも確証が得られていませんでした。


 検診などで、リポタンパク質は酵素を使う簡単な方法で測定されています。これは一部のタンパク質だけを可溶化させて反応させる方法で、ずっと生化学で使われてきた超遠心法と同様の結果が得られるように調整したものです。ところが、この方法ではLDLやHDL・善玉コレステロールの正確な値がわからないことが明らかになっていました。超遠心法が間違っていたのです。

(小西准教授ら2022年。https://doi.org/10.1371/journal.pone.0275066)



研究の概要


 今回、救急搬送された患者さんたちの同意を得て、その血清をゲルろ過HPLCという精密な方法で調べました。すると患者さんたちと、健康な方との間に大きな違いがあることがわかりました。これは、現在使用されている測定方法では分からない差でした。



研究の成果


 最も大きな危険要因はHDL1が減ること、およびLAC1とLp(a)が増加することでした。長い間、悪玉コレステロールだと考えられてきたLDLには、むしろほとんど危険性がありませんでした。スタチン(医薬)はLDLの値を下げますが、これには動脈硬化を避ける効果は期待できないことになります。



今後の展開


 現在、秋田県立大学では、より正確な診断のためにHDLなどの測定を簡便に行う方法を開発中です。これによって、危険な状態を見つけ出すことができます。

ただし、リポタンパク質のプロファイルをどうしたら改善できるのかが分かっていません。これは喫緊の課題です。スタチンにかわる医薬を探す必要もあるでしょう。

 今後も秋田県立循環器・脳脊髄センターと協力・連携して研究を進めます。



参考データ


図1A:HPLCを用いた測定B:従来法「主成分分析による比較」


黒い点が患者、Sはスタチンを服用していた患者である。左のAでは患者と対照がきれいに分かれているが、従来法ではほとんど分離がみられない。現状の測定値はまったく役に立たないことがわかる。



図2A フリーグリセロール


いますぐに使える目安として、これを指標にできそうだ。65歳以上でこの値が1mg/dlよりも高いと危険だと考えられる。食べる中性脂肪を減らすことで、この値を下げることができる。ただしこれは若い患者の発見には使えない。



研究グループ


秋田県立大学生物資源科学部の小西智一准教授(専門:植物分子生理学)と秋田県立病院機構秋田県立循環器・脳脊髄センター。


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