未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、
「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。
根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定
(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。
このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。
人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。
以下に、最新の科学知見をご紹介します。
特発性上葉優位型肺線維症と栄養障害
〜「栄養評価と痩せないこと」の重要性 〜
研究の概要
浜松医科大学内科学第二講座の鈴木勇三助教,須田隆文教授らの研究チームは,特発性上葉優位型肺線維症(iPPFE)では 70%を超える患者さんで栄養障害が見られること,特に重度の栄養不良や経年的な栄養障害の進行が,重症度や予後予測の指標として役立つことを明らかにしました。
研究の背景
間質性肺炎は肺胞の壁に炎症や損傷が起こり,肺胞壁が厚く硬くなるため(線維化),酸素を取り込みにくくなる原因不明の疾患です。特発性上葉優位型肺線維症(iPPFE)は,肺の上葉優位に線維化が進行する疾患です。
iPPFE 患者さんの多くは痩せ型の体型を呈することが知られていますが、「痩せていること」や「痩せていくこと」の意義は不明で,栄養障害の頻度や,栄養不良と疾患重症度や予後との関わりもわかっていませんでした。
研究手法・成果
iPPFE と診断された患者さんの診断時と診断後 1 年のデータを用いて栄養状態の評価を行いました。栄養評価は体重と血清アルブミン値からなる栄養指標(GNRI: GeriatricNutritional Risk Index)を用いて行いました。
驚くべきことに、iPPFE 患者さんでは栄養障害が 70%を超える患者さんで認められました(131 人中 96 人, 73.3%)。特に重度の栄養不良や経年的な栄養障害の進行は,病気の重症度や疾患進行と関連することが明らかになりました。
研究成果のポイント
1.特発性上葉優位型肺線維症(iPPFE)は肺の上葉に強い線維化きたす原因不明の病気です。
患者さんの多くが痩せ型体型を呈しますが,iPPFE 患者さんの栄養障害の頻度や,栄養不良
と疾患重症度や予後との関わりは不明でした。
2.体重と血清アルブミン値からなる栄養指標(GNRI)を用いて栄養評価を行ったところ,
70%を超える患者さんで栄養障害が認められました。
3.特に重度の栄養不良や経年的な栄養障害の進行は,病気の重症度や疾患進行と関連する
ことを,世界で初めて明らかにしました。
4.「痩せないこと」が病気進行を遅らせ,ひいては重要な「治療目標」につながる可能性が
示されました。
<参考図>
今後の展開
本研究の結果から,iPPFE では栄養評価が重要なことが示されました。
特に「痩せていること」・「痩せていくこと」が、非常に重要なサインになっていることを明らかにしました。すなわち「痩せない」が重要な治療目標であることが示唆されます。
今後は「痩せない」栄養管理や行動変容を促す方法の確立が重要と考えられます。
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