未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、
「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。
根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定
(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。
このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。
人の「健康」の仕
組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。
以下に、最新の科学知見をご紹介します。
SSPE患者脳のタウ線維は慢性外傷性脳症(CTE)のタウ線維と同じ構造である
研究の背景
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は、麻疹感染後、数年の無症状期間を経て発症する致死的な神経疾患です。
神経病理学的には、大脳皮質の重度の神経細胞脱落、脱髄、血管周囲リンパ球浸潤、ウイルス性核内封入体と共に、線維化したタウの病変(神経原線維変化)を伴うのが特徴です。
重度の神経細胞脱落、脱髄、血管周囲リンパ球浸潤、ウイルス性核内封入体と共に、大脳皮質などに神経原線維変化とよばれるタウ病変を伴うのが特徴です。
今回2例のSSPE患者剖検脳からタウ線維を調製し、クライオ電顕解析を実施しました。その結果、反復的な頭部衝撃や爆風への曝露の後、無症状期間を経て発症する慢性外傷性脳症(CTE)と原子構造が同一であることが判明しました。これらの結果は、CTE型のタウの折り畳みが、ウイルス感染を原因とする脳炎という異なる環境的障害によっても引き起こされることを示唆します。
本研究は、愛知医科大学加齢医学研究所の吉田眞理教授、国立精神・神経医療研究センターの高尾昌樹部長、MRC分子生物学研究所のMichel GoedertグループリーダーとSjors Scheresグループリーダーらとの共同研究です。
研究の内容
SSPEの2症例の前頭葉皮質からタウ線維を調製し、クライオ電顕で観察しました。両者とも小児期に麻疹に罹患し、数年の無症状の後、SSPEの臨床像が現れました。
症例1は、抗タウ抗体による免疫組織化学的検査で、3Rタウ、4Rタウ、リン酸化タウに特異的な抗タウ抗体で染色された神経原線維変化が認められました。また、サルコシル不溶性画分のウェスタンブロット解析ではAD患者由来のタウと同じバンドが観察され、これまでの結果と一致しました。クライオ電顕解析では、CTEタウ線維と同じタイプIとタイプII の2種類のタウ線維が観察され、Type Iタウ線維が90%以上を占めていました。
発表のポイント
SSPEとCTEのタウ病変は、ADとは異なり、皮質II層とIII層の神経細胞にタウ蓄積が形成される点で共通しています。このタウの折り畳みはアルツハイマー型と異なり、βヘリックス領域がより開いたコンフォメーションをとります。SSPEはCTEフォールドを持つ3R+4Rタウパチーの2例目です。
SSPEとCTEに共通する機序としては、脳の炎症が考えられます。長期間続いた脳炎後に起こる他のタウオパチーでも同様のCTE型のタウが蓄積している可能性が考えられます。
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