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健康を科学で紐解く シリーズ92  「デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-050/NCNP-03)の 米国での第Ⅰ/Ⅱ相試験治験計画合意に関するお知らせ」

更新日:2023年6月25日


未在 -Clinics that live in science.- では「生きるを科学する診療所」として、

「健康でいること」をテーマに診療活動を行っています。

根本治癒にあたっては、病理であったり、真の原因部位(体性機能障害[SD])の特定

(検査)が重要なキー(鍵)であると考えています。

このような観点から、健康を阻害するメカニズムを日々勉強しています。


人の「健康」の仕組みは、巧で、非常に複雑で、科学が発達した現代医学においても未知な世界にあります。


以下に、最新の科学知見をご紹介します。


 



デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-050/NCNP-03)の

米国での第Ⅰ/Ⅱ相試験治験計画合意に関するお知らせ




 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市、理事長:中込和幸、以下、NCNP)は、日本新薬株式会社(本社:京都市南区、代表取締役社長:中井亨、以下、日本新薬)と共同で開発を進めているアンチセンス核酸医薬品であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)治療薬(NS-050/NCNP-03)を用いた第Ⅰ/Ⅱ相試験について、米国食品医薬品局(FDA)と治験計画の合意に至ったことをお知らせ致します。


DMD は、筋肉細胞を支えるジストロフィンタンパク質の欠損が原因で、骨格筋、心筋、肺の筋力低下を引き起こす進行性の筋ジストロフィーです。DMD にはさまざまな遺伝子変異型があり、NS-050/NCNP-03 の投与対象となるのは、エクソン 50 スキッピングにより治療可能な遺伝子変異が確認された DMD 患者さんです。


FDA との治験計画の合意を踏まえ、2023 年後半には、米国にて NS-050/NCNP-03 の治験に患者組み入れを開始する予定です。米国での治験は、日本新薬の米国子会社 NSPharma,Inc.(本社:米国ニュージャージー州、社長:田中 次男)が実施する予定です。




開発の背景


 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子の変異が原因で、筋の細胞膜からジストロフィンタンパク質が失われ、徐々に筋力低下が進む難病で、男児に発症します。


「エクソン・スキップ治療」は、アンチセンス核酸と呼ばれる短いDNA の様な合成核酸を用いて、メッセンジャーRNA 前駆体から成熟メッセンジャーRNA が作られる過程で、タンパク質に翻訳されるエクソン領域の一部を人為的に取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正する治療法です(イン・フレーム化といいます)。


この結果、正常なジストロフィンに比べると、タンパク質の一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンが発現して筋機能の改善が期待できます。この治療でスキップの対象となるエクソンは患者の変異形式に応じて異なり、現在までに、本邦では、NCNP と日本新薬が共同で見出した NS-065/NCNP-01 を有効成分としたエクソン 53 スキップ薬であるビルテプソ®点滴静注 250mg が製造販売承認を取得しておりますが、エクソン 53 スキップ薬が適応にならない患者に対して、別のエクソンを標的とした薬剤の開発が喫緊の課題となっております。


現在、NCNP はエクソン 44 スキッピングによる NS-089/NCNP-02 を 2 番目の開発品目として日本新薬と共同で開発を進めていますが、NS-050/NCNP-03 はエクソン 50 スキッピングによる 3 番目の開発品目となります。




用語の説明


<デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)>


DMD は、男児に発症する、もっとも頻度の高い遺伝性筋疾患で、ジストロフィンと呼ばれる筋肉の細胞の骨組みを作るタンパク質(ジストロフィンタンパク質)の遺伝子に変異が起こることで、正常なタンパク質が作れなくなり、筋力が低下してやがて死に至る重篤な疾患です。現在、その進行を遅らせる目的でステロイド剤による治療が行なわれていますが、それ以外に有力な治療法は存在せず、新たな治療法の開発が必要とされています。


<エクソン・スキップ治療>


アンチセンス核酸と呼ばれる短い合成核酸(DNA の様なもの)を用いて、遺伝子の転写産物(メッセンジャーRNA)のうち、タンパク質に翻訳される領域(エクソン)の一部を人為的に取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正(これをイン・フレーム化といいます)する治療法です。正常なジストロフィンタンパク質に比べると、その一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンタンパク質が発現し、筋機能の改善が期待できます。この治療の対象となるエクソンは、患者の変異形式に応じて異なり、NS-050/NCNP-03 はエクソン 50 を対象としています。

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